■分割数の漸近挙動(その98)
【2】制限のある分割
制限のない分割に対する母関数については,(その97)で述べましたが,たとえば,最大の整数がmax,最小の整数がminである場合のnの分割に対する母関数は,
f(x)=1/{(1-x^min)(1-x^(min+1))・・・(1-x^(max-1))(1-x^max)}
と書くことができます.
同様に,6以上の偶数に分割する場合の母関数は
f(x)=1/{(1-x^6)(1-x^8)(1-x^10)・・・}
となるのですが,次に,nをすべて異なる数に分割する仕方について考えましょう.
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この場合の母関数は,各整数を高々1回,繰り返すことなく取ることになるますから,制限のない場合の母関数
f(x)=(1+x+x^2+・・・)(1+x^2+x^4+・・・)(1+x^3+x^6+・・・)・・・
の因数を1以外に1つの項だけもつようにすればよい,したがって,
f(x)=(1+x)(1+x^2)(1+x^3)・・・
となることがわかります.
また,この母関数は
(1+x)(1+x^2)(1+x^3)・・・
=(1-x^2)/(1-x)・(1-x^4)/(1-x^2)・(1-x^6)/(1-x^3)・・・
=1/(1-x)(1-x^3)(1-x^5)・・・
と書き換えることができます.
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これは奇数の整数への分割に対応する母関数であることがわかります.すなわち,
q(n):nの奇数のみを用いた分割の総数
r(n):nの互いに異なる数を用いた分割の総数
とすると
Σq(n)x^n=1/(1-x)(1-x^3)(1-x^5)・・・
Σr(n)x^n=(1+x)(1+x^2)(1+x^3)・・・
であり,両者の母関数は一致します.
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こうして,異なる数への分割と奇数への分割が同数あるという注目すべき結果を得ることができたのですが,例えば,5を異なる数に分割するのは5,4+1,3+2の3通り,奇数に分割するのは5,3+1+1,1+1+1+1+1の3通りというわけです.
もし,物理状態がn個の基本粒子の分割に関係しているとすると,相異なる分割と奇数の分割は区別できないことがわかったのですが,実際,整数の分割問題は,現在では,統計力学(Maxwell-Boltzmann統計,Bose-Einstein統計,Fermi-Dirac統計)など様々な分野で実際的な問題を解決するのに用いられています.
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