■分割数の漸近挙動(その78)

 1916年,ラマヌジャンはラマヌジャン数のゼータについて考え,ある予想をたてました.ラマヌジャン数のゼータ,すなわち,

  L(s)=Στ(n)n^(-s)

とおくと(オイラー積のアナローグ)

  L(s)=Π{1-τ(p)p^(-s)+p^(11-2s)}^(-1)

が成り立つことを予想したのです.

 歴史上最初のゼータであるオイラー積

  ζ(s)=Σn^(-s)=Π(1−p^(-s))^(-1)

は積の中身がp^(-s)の1次式であり,本質的には1次のゼータでしたが,L関数では,p^(-1)の1次式から2次式に進化しているのです.ラマヌジャン数のゼータは,歴史上最初の2次のゼータといえるのですが,新種のゼータに関するこの予想は,翌年,モーデルによって証明されました(1917年).

 また,τ(p)はpが増加するとき,急激に増加するのですが,1974年,ドリーニュによって,ラマヌジャン予想,

  |τ(p)|<2p^(11/2)

が証明されています.この式はp^(-s)=xとおいた2次式

  1-τ(p)x+p^11x^2

の虚根条件(判別式:τ(p)^2-4p^11<0)となっていることに注意して下さい.

 このようにして,

  τ(p)=2p^(11/2)cosθp   (0≦θp≦π)

なるθpがただひとつとれます.そこで,任意に固定された0≦a≦b≦πに対して,偏角θpが[a,b]となる素数密度は

  2/π∫(a,b)sin^2θdθ

で与えられるだろうという佐藤幹夫予想がたてられています.すなわち,θp=π/2のあたりに多く分布していることを予想しているというわけです.この予想は2009年,テイラーにより証明されました.

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