■分割数の漸近挙動(その60)
三角関数を一般化したものとしては楕円関数(1800年代)が代表的ですが,これらの関数を用いてアーベル関数論(1900年代)への発展が見られました.
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【1】オイラーと三角関数
オイラーは三角関数sinxの零点が0,±π,±2π,±3π,・・・であることから三角関数を因数分解して,無限乗積
sinx=xΠ(1−x^2/n^2π^2)
sin(πx)=πxΠ(1−x^2/n^2)=π/Γ(x)Γ(1−x)
を得ました.
sinxの無限乗積とベキ級数展開(テイラー展開)
sinx=x−x^3/3!+x^5/5!−x^7/7!+・・・
を用いれば,偶数ゼータの値
ζ(2)=π^2/6,ζ(4)=π^4/90,ζ(6)=π^6/945,ζ(8)=π^8/9450,・・・
が得られます.
S1(x)=2sin(πx)=2πxΠ(1−x^2/n^2)=(exp(πix)−exp(−πix))/i
と定義すると,n分値,2n分値に関して
ΠS1(k/2n)=n^(1/2) (k=1~n-1)
ΠS1(k/n)=n (k=1~n-1) (→楕円関数への一般化がある)
が成り立ちます.
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【2】レムニスケート三角関数
sl(x)=xΠ(1−x^4/α^4)/Π(1−x^4/β^4)
α=(m+ni)ω,β=(m+ni)ω/2をわたる.
すなわち,x→x+ωi,x+2ωの2重周期になっている(ガウス).
π=2∫(0,1)dt/(1−t^2)^1/2
に対して,
ω=2∫(0,1)dt/(1−t^4)^1/2
で定義される.
Σ1/(m+ni)^4=ω^4/10 (フルヴィッツの公式)
レムニスケート三角関数の加法定理についてはコラム「楕円積分の加法定理」を参照されたい.
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【3】ヤコビのsn関数
sn(x,k)=xΠ(1−x/α)/Π(1−x/β)
は
∫(0,sn(x,k))dt/(1−t^2)(1−k^2t^2)^1/2=x
で定義される.
[1]k=0のとき
∫(0,sin(x))dt/(1−t^2)^1/2=x
[2]k=iのとき
∫(0,sl(x))dt/(1−t^4)^1/2=x
[3]k=1のとき
∫(0,sn(x,1))dt/(1−t^2)=x
より
sn(x,1)=tanh(x)
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