■分割数の漸近挙動(その47)

【2】ヤコビの3重積公式

  (a;q)n=(1-a)(1-aq)・・・(1-aq^(n-1))=Π(1-aq^k)

なる記号を導入すると

  (q;q)n=(1-q)(1-q^2)・・・(1-q^n)=Π(1-q^k)

になるが,ヤコビの3重積公式

  Σz^nq^(n(n+1)/2)=Π(1-q^n)(1+zq^n)(1+z^(-1)q^(n-1))

  (x;q)∞(q/x;q)∞(q;q)∞=Σ(-1)^m・q^(m(m-1)/2)・x^m x=-z

と表現される.ヤコビの3重積公式はテータ関数そのものを表している.

[1]ヤコビの3重積公式において,qをすべてq^3に置き換え,x=qとすれば,左辺はΠ(1-q^3n)(1-q^3n-1)(1-q^3n-2)=Π(1-q^n)=(q;q)∞となり,

  Π(1-q^n)=Σ(-1)^m・q^(m(3m+1)/2)   (オイラーの5角数定理)

と表される.

 オイラーは

(1)nが五角数でない限り,正の整数nを偶数個の異なる正の整数の和で表す方法の総数と奇数個の異なる正の整数の和で表す方法の総数が等しいこと,

(2)nが五角数ならば,正の整数nを偶数個の異なる正の整数の和で表す方法の総数−奇数個の異なる正の整数の和で表す方法の総数=(−1)^k,n=k(3k+1)/2

を示したことになる.

[2]また,qをすべてq^2に置き換え,x=qとすれば,左辺は

  Π(1-q^2n)(1-q^2n-1)^2

ここで,異なる数への分割と奇数への分割が同数あるという結果に対応する

  Π(1-q^2n-1)=Π1/(1+q^n)

より,

  Π(1-q^n)/(1+q^n)=Σ(-1)^m・q^(m^2)  (ガウスの4角数定理)

[3]今度はx=−qとすれば,(-1;q)∞=2Π(1+q^n)より,左辺は

  2Π(1-q^2n)(1+q^n-1)=2Π(1-q^2n)/(1-q^2n-1)

右辺はΣ(-∞~∞)q^(m(m+1)/2)であるが,m(m+1)/2はm=-1/2について対称であるから和を取る範囲をm:-∞~∞からm:0~∞に狭めることができて

  Σ(-∞~∞)q^(m(m+1)/2)=2Σ(0~∞)q^(m(m+1)/2)

これより

  Π(1-q^2n)/(1-q^2n-1)=Σq^(m(m+1)/2)  m:0~∞   (ガウスの3角数定理)

[4]x=δとすれば,

  (x;q)∞(q/x;q)∞(q;q)∞=(1-δ)(δq;q)∞(q/δ;q)∞(q;q)∞

  Σ(-1)^m・q^(m(m-1)/2)・x^m=Σ(1~∞)(-1)^m・q^(m(m-1)/2)・(δ^m-δ^-m+1)=Σ(0~∞)(-1)^m+1・q^(m(m+1)/2)・δ^-m(δ^2m+1-1)

両辺を(1-δ)で割り,δ→1とすれば,

  左辺→Π(1-q^n)^3

  右辺→Σ(0~∞)(-1)^m-1・(2m+1)q^(m(m+1)/2)

より,

  Π(1-q^n)^3=Σ(-1)^m(2m+1)q^((m^2+m)/2)   (ヤコビの3角数定理)

[5]三角数等式

 ヤコビの三重積公式

  Σz^nq^(n(n+1)/2)=Π(1-q^n)(1+zq^n)(1+z^(-1)q^(n-1))

において,z=1とすれば,

  Σq^(n(n+1)/2)=Π(1-q^2n)(1+q^(n-1))

が得られる.ここで,右辺が第0項から始まるようにパラメータをずらすと,

  Π(1+q^n)(1-q^2n+2)=Σq^(m(m+1)/2)  m:-∞~∞

[6]七角数等式

 qをすべてq^5に置き換え,z=−1/qとすれば,

  Σ(-1)^mq^(m(5m+3)/2)=Π(1-q^5n)(1-q^5n-1)(1-q^5n-4)

が得られる.ここで,右辺が第0項から始まるようにパラメータをずらすと,

  Π(1-q^5n+1)(1-q^5n+4)(1-q^5n+5)=Σ(-1)^mq^(m(5m+3)/2)  m:-∞~∞

[7]m角数等式

 qをすべてq^m-2に置き換え,z=−1/qとすれば,

  Σ(-1)^nq^(n((m-2)n+m-4)/2)=Π(1-q^(m-2)n)(1-q^(m-2)n-1)(1-q^(m-2)n+1)

が得られる.ここで,右辺が第0項から始まるようにパラメータをずらすと,

  Π(1-q^(m-2)(n+1))(1-q^(m-2)(n+1)-1)(1-q^(m-2)(n+1)+1)=Σ(-1)^nq^(n((m-2)n+m-4)/2)  m:-∞~∞

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