■分割数の漸近挙動(その31)

【1】分割数の母関数

 「分割数」とは与えられた整数にどれだけ多くの分割があるのか(4=1+1+1+1,4=3+1)という整数の分割理論のことです.整数の分割では,3=2+1と3=1+2のように足し算の順序が違うものは同じと見なすことにします.

 たとえば,4を分割するには非増加数列で構成した5通りの方法,4=3+1=2+2=2+1+1=1+1+1+1がありますから,p(4)=5.同様にして,5=4+1=3+2=3+1+1=2+2+1=2+1+1+1=1+1+1+1+1よりp(5)=7となります.(分割を図形的に表す方法にヤング図形がある.ヤング図形は非増加な非負整数列を表現する印象的な方法である.)

  p(0)=1,p(1)=1,p(2)=2,p(3)=3,p(4)=5,p(5)=7,p(6)=11,

  p(7)=15,p(8)=22,p(9)=30,p(10)=41,p(11)=56,p(12)=77,・・・

ここで,p(n)はオイラーの分割関数とも呼ばれますが,定義が簡単そうにみえるにも関わらず,易しい式で表すことはできません.

 ところで,分割数は,以下の公式によって代数的に定義することができます.

  f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)

    =Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・

すなわち,f(x)は分割関数p(n)の母関数で,p(n)はx^nの係数になっています.

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 オイラーは,4平方和定理「すべての正の整数は4個の整数の平方和で表される」を証明するために,級数

  g(x)=1+Σx^(n^2)=1+x+x^4+x^9+x^16+・・・

を考察しています.すると,τ(n)を4つの平方数の和に表す仕方の数として,その母関数は

  g(x)^4=Στ(n)x^n

となります.(しかし,当時これを確認するのは困難で,19世紀に入ってからヤコビが楕円関数を用いて解決しました.)

 オイラーのアイディアは,nの分割

  n=n1+n2+・・・+nk

がnをk個の平方数の和への分割(nが平方和として何通りに書けるか):

  n=□1+□2+・・・+□k

として表した場合の解と1対1に対応することより,

  f(x)=(1+x+x^2+・・・)(1+x^2+x^4+・・・)(1+x^3+x^6+・・・)(1+x^4+x^8+・・・)・・・

    =Π(1-x^n)^(-1)

 x^k1を第1因子(1+x+x^2+・・・)の一般項,x^2k2を第2因子(1+x^2+x^4+・・・)の一般項,x^3k3を第3因子(1+x^3+x^6+・・・)の一般項,・・・とすると,

  n=k1+2k2+3k3+・・・

となって,x^nの項が整数nの分割に対応することになるのですが,オイラーはこのようにしてp(n)の母関数

  f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)

    =Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・

を得ています.

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