■分割数の漸近挙動(その12)

 分割数p(n)を評価する問題は数論において研究されていて,ラマヌジャンが予想した注目すべき漸近近似式

  p(n) 〜 1/4n√(3)exp(π√(2n/3))

は,1918年,ハーディーとラマヌジャンによって,円周法を用いて証明が与えられています.

 (その2)では

  exp(2√n)/exp(5)n^2≦p(n)≦exp(π√(2n/3))

したがって,十分大きなnに対しては

  exp(c1√n)≦p(n)≦exp(c2√n)

となる評価が得られたことになります.

 ラマヌジャンの結果より粗いのですが,関数の増加に対するオーダーはわかります.今回のコラムではこれよりももっと粗いp(n)の上界

  p(n)<exp(3√n)

を示すことにしましょう.

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【1】分割数の漸近挙動

 分割関数の母関数

  f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)

    =Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・

の対数をとると

  lnf(x)=-ln(1-x)-ln(1-x^2)-ln(1-x^3)-・・・

=(x+x^2/2+x^3/3+・・・)+(x^2+x^4/2+x^6/3+・・・)+(x^3+x^6/2+x^9/3+・・・)+・・・

=(x+x^2+x^3+・・・)+(x^2+x^4+x^6+・・・)/2+(x^3+x^6+x^9+・・・)/3+・・・

=x/(1-x)+x^2/(1-x^2)/2+x^3/(1-x^3)/3+・・・

 ここで,x^n/(1-x^n)  lnf(x)=x/(1-x){1+1/2^2+1/3^2+・・・}<2x/(1-x)

lnp(n)ここで,x=(n+√n)/n+3√n)とおくと,p(n)<exp(3√n)

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【2】ディリクレによる約数関数の漸近挙動

 ここでは{1+1/2^2+1/3^2+・・・}<2としましたが,

  {1+1/2^2+1/3^2+・・・}=π^2/6

とすることもできるでしょう.

 実は,円周法に基づく漸近公式の結果を正確に証明するだけでも,長くてこみ入った理論が必要になります.そこで漸近公式の概要だけを簡単に述べますが,σ(k)をkの約数の和とすると,p(n)に対する漸化式

  p(n)=1/nΣσ(k)p(n-k)

において,σ(k)の漸近的振る舞い

  1/n^2Σσ(k)〜π^2/12

を用いると,nが大きい場合の分割数の漸近挙動

  p(n)〜exp(π√(2n/3))/4n√3

を得ることができます.このことから,p(n)は準指数関数と考えることができます(p(n)^(1/n)→1).

 ここで,約数の総和関数σ(k)の漸近挙動

  1/n^2Σσ(k)〜π^2/12

がでましたが,1838年,ディリクレはσ(n)の平均値が,大きいnに対して  1/nΣσ(k)〜π^2n/12

を示しました.

  1/25Σσ(k)=20.88 → ディリクレの評価はπ^2・25/12=20.56

  1/50Σσ(k)=41.6 → ディリクレの評価はπ^2・50/12=41.12

  1/100Σσ(k)=82.99 → ディリクレの評価はπ^2・100/12=82.25

 また,約数の個数関数d(k)の平均値の漸近挙動について,ディリクレは

  1/nΣd(k)〜ln(n)-2γ+1

を示しました.

  1/25Σd(k)=3.48 → ディリクレの評価はln(25)-2γ+1=3.37

  1/50Σd(k)=4.14 → ディリクレの評価はln(50)-2γ+1=4.07

  1/100Σd(k)=4.82 → ディリクレの評価はln(100)-2γ+1=4.76

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【3】オイラー関数φ(n)の漸近挙動

 オイラー関数φ(n)(nより小さくnの互いに素な正整数の個数関数)は多くの興味深い性質をもっています.

  σ(n)+φ(n)=nd(n)

はnが素数であるための必要十分条件です.その上界・下界は

  n^(1/2)/n<φ(n)≦n-1

で与えられますが,1857年,リュービルは

  ζ(s-1)/ζ(s)=Σφ(n)/n^s

を示しました.

 また,オイラー関数φ(n)の平均値については

  1/nΣφ(k)/k(φ(n)の平均/n)〜{Σ1/n^2}^(-1)=6/π^2

  1/n^2Σφ(k)〜3/π^2

のようになります.すなわち,大きいnの値に対して,オイラー関数φ(n)の平均値は

  1/nΣφ(k)〜3n/π^2

で近似されます.

 位数nのファレイ分数の個数は

  1+Σφ(k)

ですが,大きいnに対して,この和は3(n/π)^2で近似されることになります.また,1883年,シルベスターは位数nのファレイ分数の和が

  (1+Σφ(k))/2

であることを示しました.

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