■分割数の漸近挙動(その9)
【4】分割数の母関数
「分割数」とは与えられた整数にどれだけ多くの分割があるのか(4=1+1+1+1,4=3+1)という整数の分割理論のことです.整数の分割では,3=2+1と3=1+2のように足し算の順序が違うものは同じと見なすことにします.
たとえば,4を分割するには非増加数列で構成した5通りの方法,4=3+1=2+2=2+1+1=1+1+1+1がありますから,p(4)=5.同様にして,5=4+1=3+2=3+1+1=2+2+1=2+1+1+1=1+1+1+1+1よりp(5)=7となります.(分割を図形的に表す方法にヤング図形がある.ヤング図形は非増加な非負整数列を表現する印象的な方法である.)
p(0)=1,p(1)=1,p(2)=2,p(3)=3,p(4)=5,p(5)=7,p(6)=11,
p(7)=15,p(8)=22,p(9)=30,p(10)=41,p(11)=56,p(12)=77,・・・
ここで,p(n)はオイラーの分割関数とも呼ばれますが,定義が簡単そうにみえるにも関わらず,易しい式で表すことはできません.
ところで,分割数は,以下の公式によって代数的に定義することができます.
f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)
=Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・
すなわち,f(x)は分割関数p(n)の母関数で,p(n)はx^nの係数になっています.
オイラーは,4平方和定理
「すべての正の整数は4個の整数の平方和で表される」
を証明するために,級数
g(x)=1+Σx^(n^2)=1+x+x^4+x^9+x^16+・・・
を考察しています.すると,τ(n)を4つの平方数の和に表す仕方の数として,その母関数は
g(x)^4=Στ(n)x^n
となります.(しかし,当時これを確認するのは困難で,19世紀に入ってからヤコビが楕円関数を用いて解決しました.)
オイラーのアイディアは,nの分割
n=n1+n2+・・・+nk
がnをk個の平方数の和への分割(nが平方和として何通りに書けるか):
n=□1+□2+・・・+□k
として表した場合の解と1対1に対応することより,
f(x)=(1+x+x^2+・・・)(1+x^2+x^4+・・・)(1+x^3+x^6+・・・)(1+x^4+x^8+・・・)・・・
=Π(1-x^n)^(-1)
x^k1を第1因子(1+x+x^2+・・・)の一般項,x^2k2を第2因子(1+x^2+x^4+・・・)の一般項,x^3k3を第3因子(1+x^3+x^6+・・・)の一般項,・・・とすると,
n=k1+2k2+3k3+・・・
となって,x^nの項が整数nの分割に対応することになるのですが,オイラーはこのようにしてp(n)の母関数
f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)
=Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・
を得ています.
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[補]分割数の漸近挙動
σ(k)をkの約数の和とすると,p(n)に対する漸化式
p(n)=1/nΣσ(k)p(n-k)
が得られます.
また,σ(k)の漸近的振る舞い
1/n^2Σσ(k)〜π^2/12
を用いると,nが大きい場合の分割数の漸近挙動
p(n)〜exp(π√(2n/3))/4n√3
を得ることができます(ハーディーとラマヌジャン,1918年).
なお,分割を数え上げるとき,並べる順番は問題にしませんが,もし,順番を考慮すると答えは非常に簡単になります.自然数nをk分割する総数は
n=i1+i2+・・・+ik
において,ij≧1より,n−1カ所にk−1枚の仕切りをつけて分配する問題と等価になります.
(n-1)C(k-1)=(n-1,k-1)
したがって,
Σ(n-1,k-1)=2^(n-1)
より2^(n-1)通りあります.このことより,n=3では4つの順序つき分割
3=1+1+1,3=1+2,3=2+1,3=3
が存在することがわかります.
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