■カルダノの公式(その50)

 ここではx^2の項の係数を0にする変数変換(カルダノ変換)によって,

  u^3+pu+q=0

の形にして,このp,qを用いた形で3次方程式の根の公式を与えましたが,2次方程式の場合と同様に「3次方程式の判別式」を使っても書くことができることを示しておきます.

 

 3次方程式をx^3+bx^2+cx+d=0とおいても,一般性は失われません(もし,x^3の係数がa≠1ならば,aで両辺を割ればこの形になる).この方程式の判別式は,

  D=−4c^3−27d^2+18bcd+b^2c^2−4b^3d

 

 また,

  B=−2b^3+9bc−27c,

  u^3={B+3√(−3D)}/2,

  v^3={B−3√(−3D)}/2

とおくと,x^3+bx^2+cx+d=0の3根は,判別式Dを使って

  x1=(−b+u+v)/3,

  x2=(−b+ω^2u+ωv)/3,

  x3=(−b+ωu+ω^2v)/3

で与えられます.

 

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【補】判別式 

 3次方程式の判別式は,ax^3+bx^2+cx+d=0の係数を代入して整理すると,

  D=−4ac^3−27a^2d^2+18abcd+b^2c^2−4b^3d

が得られるが,とても憶える気にならないし,また,憶えられる代物でもないであろう.fの次数が高い場合,その判別式を計算するのは容易ではない.ちなみに,5次方程式の判別式の項数は59にもなるという.

 

 一方,ジラールの標準形であれば,判別式は簡単な形で表される.

 f(x)=x^3+px+qの判別式は

  D=−(4p^3+27q^2)

 f(x)=x^n+px+qの判別式は

  D=(-1)^(n(n-1)/2){(-n+1)^(n-1)p^n+n^nq^(n-1)}

 

 また,fの次数が高い場合の判別式は,重根をもつことは判定できても,実係数2次方程式のように実根,虚根,重根の判別ができるわけではない.たとえば,実係数3次方程式では,

 (H1)異なる3つの実数解をもつ

 (H2)3つの実数解をもつが重根が入っている

 (H3)1つの実数解と1組の共約な虚数解をもつ

のいずれかであるが,D>0ならばH1,D=0ならばH2,D<0ならばH3である.また,3重解をもつための必要十分条件はD=0,b^2−3ac=0である.

 

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