■j(z)関数の特殊値(その62)

 1729は,ラマヌジャンのタクシー・ナンバーの逸話でよく知られているように,2つの3乗数の和で2通りに表される最小の整数である.

  1729=12^3+1^3=10^3+9^3

 1728はそれよりも1小さい.したがって,

  1729=12^3=12・12・12

であるが,モジュラー関数j(z)のz=iにおける特殊値である.この性質がタクシー・ナンバーの逸話のもとになっていると思われる.

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【1】3次曲線

 1次変換で移り合うものは同一視して,3次式の標準形を求める.テイトの標準形は

  y^2+xy=x^3−36x/(j−1728)−1/(j−1728)

  ここでjは複素数で,j≠0,1728,j(E)=jと定める.

 また,ワイエルシュトラスの標準形は

  y^2=x^3−(c4/48)x−c6/864

  j(E)=c4^3/Δ,Δ=(c4^3−c6^2)/1728と定める.

  j=0→c4=0,c6≠0

  j=1728→c4≠0,c6=0

 j(E)は不変量で,3次曲線EとE’が1次変換で移り合うとき,

  j(E)=j(E’)  (同型)

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【2】2重周期関数

 zを複素変数,τを虚数部分が0でない複素数として

  x(z)=1/z^2+Σ{1/(z−mτ−n)^2−1/(mτ+n)^2}

を定義する.和は(0,0)以外のすべての整数組(m,n)についてとる.zがpτ+q(格子点)以外の点であれば,この無限和は有限値に収束する.

 さらに

  y(z)=dx(z)dz

とおくと,

  {y(z)}^2=4{x(z)}^3−g2x(z)−g3

  g2,g3はτのみに依存して,zに依存しない定数

が成立する.

 zが格子点以外の複素数を自由に動くとき(x(z),y(z))は曲線

  y^2=4x^3−g2x−g3

上を動く.

 一方,複素数zの平行移動

  z→z+mτ+n

によって,トーラス面と同一視することができる.さらに

  τ’=(aτ+b)/(cτ+d),a,b,c,dは整数で,ad−bc=1

によって,曲線y^2=4x^3−g2x−g3と同一視できる.

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