■素数定理のための発見的議論(その10)
【1】ガウスの素数定理予想
100以下の素数は25個,101から200までの素数は21個あります.素数の分布は不規則かつ複雑で未知の部分が多いのですが,18世紀から19世紀にまたがって活躍したガウスは「素数はどのような規則で現れるか」ということを考え,素数定理を予想しました(1792年:ガウスは当時15才であった).
素数定理とは,
π(x)〜x/logx (x→∞)
π(x)/(x/logx)〜1 (x→∞)
というものです.ここで,π(x)は任意の整数xを越えない素数の個数を表すものとします.”〜”記号は漸近的に等しい,すなわちxが十分大きいとき両者の比が1に近づくという意味です.
素数定理を予想するにはたくさんの素数が必要になり,実際,素数定理はガウスが素数表を眺めていたときに(実験的に)発見されました.素数定理は,ランダムにとった整数xが素数である確率がおよそ1/logxだと主張しているのですが,素数定理を合理的に予想するための簡単な発見的議論を示しておきます.
(ラフプロット)整数xが素数である確率がf(x)で表されるものとすると,確率1/xで自分より大きい素数を割り切ることになります.ここで,xをx+1に変更すると
f(x+1)≒f(x)(1−f(x)/x)
したがって,
f’(x)=−(f(x))^2/x
より,
f(x)=1/logx
を得ることができるのです.
さらに,ガウスは対数表の裏表紙に
2つの素因数をもつ数〜(loglogx)・x/logx
3つの素因数をもつ数〜1/2(loglogx)^2・x/logx
と書き込んだことが伝えられています.
expx〜1+x+x^2/2・・・・
x←loglogxを代入すると
logx〜1+logxlogx+1/2(loglogx)^2+・・・
となることが示されます.
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