■空間充填多面体(その8)

【2】2次元格子のボロノイ細胞

 1次元格子は直線上に等間隔に並んだ点の集合であり,すべての1次元格子は点の間隔が違うだけで,本質的には同じものである.しかし,2次元格子には基本的な種類が2つある.ひとつは等間隔に並んだ横列の各点の真上に他の横列の点があるもので,もうひとつは横列の点を水平方向にずらしたものである.すなわち,2次元格子の形は平行四辺形(正方形,長方形,菱形を含む)になるが,その格子点の各点に対して垂直二等分線を引くと,すべて合同なディリクレ領域ができる.

 どのような2次元格子であっても,そのディリクレ領域は4角形あるいは6角形になる.2次元の格子の多くについて,ボロノイ細胞は六角形であり,辺を点に縮めることによって四角形になるというわけである.

 無限に多くの2次元格子があるが,その対称性を考えると,本質的な配置は,正方形,長方形,菱形,二等辺三角形あるいは正三角形を2つ貼り合わせた平行四辺形状配置の5つしかない.それに対応するディリクレ領域も,正方形,長方形,切頂菱形(ソロバン珠型),長6角形(亀甲型),正6角形の5種類に限られることになる.

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【3】3次元格子のボロノイ細胞

 ディリクレ領域の概念は3次元にも一般化できる.2次元ディリクレ領域は5種類だったが,3次元格子には1848年にブラーベが発見した14種類あり,そして,これから決まる本質的なディリクレ領域は,ロシアの結晶学者フェドロフの見つけた5種類の平行多面体−−立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体(6角形4枚と菱形8枚の2種類で作る12面体),切頂8面体−−しかない.

 ついでにいうと,4次元格子のボロノイ細胞は2次元の六角形や3次元の切頂8面体にあたる素の形が3つあるため52種類へと急増する.5次元格子では素の形だけで222種類,その辺を点に縮めると膨大な数になるのでリストアップはいまでも完成していない.また,ボロノイ細胞の面の数fは原始的な格子に対するものが最大で,2(2^n−1)個である.

  n=2 → f=6

  n=3 → f=14

  n=4 → f=30

  n=5 → f=52

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