■ケプラーの球体充填問題(その14)
【2】コクセターの方法
kissing numberの問題は
τ1=2,τ2=6,τ3=12
そして,4次元以上の高次元では,8次元(240個)と24次元(196560個)の場合を除いて未解決です.
τ8=240,τ24=196560
n次元球のkissing numberの上界は,コクセターの方法によって粗雑ながら押さえられます.それは1球面上に大きさの等しい球帽(球面上の円,球面半径φ)を埋め込むときの最密充填の問題に帰着されるのですが,それは単体的密度限界
dn=(2n/(n+1))^(-n/2)Dn
=(n+1)^(1/2)(n!)^2/2^(3n/2)・vnFn(1/2arcsec(n)θ)
と類似の方法になっています.
n次元正単体(二面角2θ)の頂点を超球の中心において,(n−1)次元球面上に射影します.球面上には(n−1)次元球面正三角形ができ,その面積は
Σ=2^(-n)n!snFn(θ)
で与えられます.これは正単体の1辺の球面距離2φの関数になります.
また,σを球面正三角形の頂角の和とすると,球面上にはn個の点が配置され,(n−2)次元球帽が(n−1)次元球面を覆うことになります.そして,1つの頂角は(n−1)次元正単体を(n−2)次元球面上に射影したものに等しくなりますから
σ=n2^(-n+1)(n−1)!Fn-1(θ)
すなわち,上界は
(p,3,・・・,3),θ=π/p
なる三角形面正多面体(単体的正多面体:n−1次元面が単体)の頂点に(n−2)次元球を配置する問題となるのですが,ここで,球面上にN(φ)個の点を配置した場合,不等式
N(φ)≦σsn/Σ
が成り立ちますから,最終的に
N(φ)≦2Fn-1(θ)/Fn(θ)
sec2θ=sec2φ+n−2
を得ることができます.
kissing number(τn)に関しては,φ=π/6の場合を考えればよいので, τn≦2Fn-1(1/2arcsecn)/Fn(1/2arcsecn)
となり,
n=2 → 2F1(π/6)/F2(π/6)=6
n=3 → 2F2(1/2arcsecn3)/F3(1/2arcsecn3)=6/(3-π/arcsec3)=13.39・・・
n=4 → 2F3(1/2arcsecn4)/F4(1/2arcsecn4)=5(1+1/(2-2π/arcsec4))=26.44・・・
5次元以上では,数値積分によらなければなりませんが,
fn(x)=Fn(1/2arcsecx)
と書くことにすると,
f2(x)=arcsecx/x
fn(x)=1/π∫(n-1,x)fn-2(x-2)/x√(x^2-1)dx
=fn(n)+1/π∫(n,x)fn-2(x-2)/x√(x^2-1)dx
fn(x)=fn-1(x)-1/3fn-3(x)+2/15fn-5(x)-17/315fn-7(x)+62/2835fn-9(x)-・・・(n:odd)
fn(x)=1/3fn-2(x)-2/15fn-4(x)+17/315fn-6(x)-62/2835fn-8(x)+・・・(n:even)
リーチは台形則を用いて数値積分し,
2fn-1(n)/fn(n)
を求めました.その結果は
2f3(4)/f4(4)=22.44・・・
2f4(5)/f5(5)=48.70・・・
2f5(6)/f6(6)=85.81・・・
2f6(7)/f7(7)=146.57・・・
2f7(8)/f8(8)=244.62・・・
以下,(9)401,(10)648,(11)1035,(12)1637,・・・と続きます.
コクセターの方法は,現在知られている上界よりほんの少し大きい方に偏っていることがわかります.たとえば,コクセターは4次元におけるキッシング数の限界は24〜26,8次元ではE8格子から240〜244を提示しましたが,スローンとオドリツコは4次元における上限を25に,ハーディンがそれを24にまで下げました.8次元ではスローンとオドリツコは上限を240にまで減らしました.
===================================