■ケプラーの球体充填問題(その5)
2000年の記事を再掲
【3】シュレーフリ関数S(x,y,z)
ここでは,n=4の場合についてのシュレーフリの計量的な方法について説明しますが,3次元の基本単体を,4次元の中心Oから単位球面上に射影した図形の球面積を求めれば,それで全球面積4v4=2π^2を割って,4次元の基本単体の個数がでます.(一般に,n次元超球の(n−1)次元表面積はnvnで与えられます.)
3次元の重直角四面体ABCDの対面を1,2,3,4で表し,面iと面jの間の二面角を(i,j)で表します.そして,
(1,3)=(1,4)=(2,4)=π/2 (隣接していない)
(1,2)=α,(2,3)=β,(3,4)=γ (隣接している)
とおきます.
これを4次元の超球面に射影し,ABCDOが4次元正多面体の1つの基本単体であるときには,
α=π/p,β=π/q,γ=π/r
で,これが実空間内に作られる条件は,前述したように
sin^2αsin^2γ>cos^2β
となります.
シュレーフリはこの単位球面上の超球面四面体ABCDを4次元の全球面の面積2π^2と合わせるために,
π^2f(α,β,γ)/8
とおきました.
関数f(α,β,γ)は,α,β,γについて微分すると,そのときの微小変化量dfは2次元の球面上の三角形の面積に比例し,それは角過剰(内角の和−π)に比例するわけですから,
π^4/4df=arccos{sinαcosγ/(sin^2α−cos^2β)^(1/2)}dα
+arccos{cosαcosβcosγ/{(sin^2α−cos^2β)(sin^2γ−cos^2β)^(1/2)}}dβ
+arccos{sinγcosα/(sin^2γ−cos^2β)^(1/2)}dγ
となるような級数を考えます.
sinαcosγ/(sin^2α−cos^2β)^(1/2)
のような引数の形は,直角三角形の性質に基づいています.
実際の計算では,コクゼターがやったようにαとγをその余角に修正した関数
S(α,β,γ)=π^2f(π/2-α,β,π/2-γ)/2
としたほうが便利のようです.
そこで,あらためてシュレーフリ関数を
S(x,y,z)=ΣX^n/n^2(cos2nx−cos2ny+cos2nz−1)−x^2+y^2−z^2
X=(D−sinxsinz)/(D+sinxsinz)
D=(cos^2xcos^2z−cos^2y)^(1/2)
と定義します.
dS=ΣX^n/n(cos2nx−cos2ny+cos2nz−1)dlogX
−2ΣX^n/n(sin2nxdx−sin2nydy+sin2nzdz)
−2(xdx−ydy+zdz)
ですが,ここでフーリエ級数の公式
Σt^n/n(cos2nu)=−1/2log(1−2tcos2u+t^2)
Σt^n/n(sin2nu)=arctan((1+t)/(1−t)tanu)−u
より,
−1/2dS=arccos{cosxsinz/(cos^2x−cos^2y)^(1/2)}dx
+arccos{sinxcosysinz/{(cos^2x−cos^2y)(cos^2z−cos^2y)^(1/2)}}dy
+arccos{sinxcosz/(cos^2z−cos^2y)^(1/2)}dz
となって,
S(x,y,z)=π^2f(π/2-α,β,π/2-γ)/2
を得ることができます.
しかし,その値を与える式は書けるものの,その中の積分が初等関数の範囲では計算できません.それでも有限個の(p,q,r)の特別な組に対する定積分の値は理論的に求めることができていて,たとえば,
S(π/6,π/3,π/6)=π^2/15
S(π/6,π/4,π/6)=π^2/48
S(π/6,π/4,π/6)=π^2/144
S(3π/10,π/3,π/6)=π^2/1800
4次元正単体(3,3,3)の場合,α=β=γ=π/3ですから,
S(π/6,π/3,π/6)=π^2/15
となります.
確かに,4次元多胞体での結果は,ジログ関数(アーベルの関数)
L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt
L2(1)=ζ(2)=π^2/6
と関係がありそうです.
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