■SPLAG(その1)
2002年,ウルフラムは「A New Kind of Science」(NKS)というタイトルの1200ページにもおよぶ書籍を出版,セルオートマトンに世界中の注目を集めた記念碑となった.
コンウェイは球充填の理論的な側面を研究した.
[参]Conway,Sloane "Sphere packings, Lattices and Groups", Springer-Verlag=「球充填・格子・群」はこのテーマに関する標準の参考書で,SPLAGと略称される.
とくに24次元のおける特定の格子の対称性の研究は,コンウェイに数学者としての名声を築くとともに,この著書は毎年結構な額の印税を彼にもたらした.私とSPLAGの出会いは2003年のお盆休みに,宮城教育大学より
Conway,Sloane "Sphere packings, Lattices and Groups", Springer-Verlag
を借用することができたのが始まりだった。
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【1】最密球充填
(2次元格子) 配位数 充填率
正方格子 4 π/4=.7854
三角格子 6 √3π/6=.9069(最密充填)
六角格子 3 √3π/9=.6046
カゴメ格子 4 √3π/8=.6802
ペンローズ格子 4 平均0.3899(非周期的格子)
(3次元格子) 配位数 充填率
単純立方格子 6 π/6=.5236
対心立方格子(bcc) 8 √3π/8=.6802
面心立方格子(fcc) 12 √2π/6=.7405(最密充填)
ダイヤモンド格子 4 √3π/16=.3401
そして,現在のところ,格子状配置の中で最密球充填となることが証明されている極大格子は,以下のn≦8についてのみである.
n ルート 格子点間距離 球充填密度
1 A1(Z) 1 1
2 A2 4√(4/3) =1.075 0.906
3 A3 6√2 =1.122 0.740
4 D4 8√4 =1.189 0.619
5 D5 10√8 =1.231 0.465
6 E6 12√(64/3)=1.290 0.373
7 E7 14√64 =1.346 0.295
8 E8 √2 =1.414 0.254
このうち,n=1,2,3については,非格子状配置(面心立方格子と充填密度は等しいが規則的でないもの,ダイヤモンド格子のように周期的ではあるが等方的でないもの,ペンローズ格子のように周期的でないものなど)やランダム配置を含めても最密であることが証明されている.
また,格子Λの双対格子をΛ~,そして層状格子をΛnで表すことにすると,
Λ1=Z=A1=A1~,Λ2=A2=A2~
Λ3=A3=D3,Λ4=D4=D4~
Λ5=D5,Λ6=E6
Λ7=E7,Λ8=E8=E8~
となる.
(証明はされていないものの)9次元以上では,10〜13次元を除き,29次元以下の最密球充填配置は層状格子Λnであることが知られている.また,30〜32次元ではQn(Quebemann格子)がΛnを上回る.
例外となるn=10,11,13では非格子状配置であり,n=12は格子状配置K12(Coxeter-Todd格子),また,n=16,24の格子状配置は
Λ16=BW16(Barnes-Wall格子),Λ24=(Leech格子)
と呼ばれる層状格子である.K12,Λ16,Λ24,Q32は最密球充填格子というわけである.
K12 → Δ=π^6/19440=0.04945・・・
Λ16 → Δ=π^8/16/8!=0.01471・・・
Λ24 → Δ=π^12/12!=π^12/479001600=0.001930・・・
と計算されているが,充填密度を
δ=Δ/vn
として規格化すると,
A1 → δ=1
A2 → δ=0.28868
A3 → δ=0.17678
D4 → δ=0.125
D5 → δ=0.08839
E6 → δ=0.07217
E7 → δ=0.0625
E8 → δ=0.0625
K12 → δ=0.03704(δ=1/27)
Λ16 → δ=0.0625(δ=1/16)
Λ24 → δ=1
であるから,リーチ格子がいかに効率的配置であるかが理解されるだろう.
1965年,リーチは群論と深く結びついた今日リーチ格子として知られるようになったものに基づいて,24次元空間の格子状詰め込みを構成したのであるが,この詰め込みにおいては,なんと1つの超球に196560個もの超球が接触している.そして,τ24の196560個の点はリーチ格子の原点から一番近い点の集合として得られることが知られている.
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