■泡の構造(その5)

【2】1つの泡に接する泡の数(その1)

[Q]3次元では泡細胞は14面体を中心とした分布をなし(面数の平均は<14),すべての泡細胞が14面以上の面をもつことは不可能である.

[A]3次元の空間が多面体により分割されるとき,3個の多面体の面が合して1本の稜線を形成し(内容的には同じことであるが)4本の稜線が1点に集まる.集合体から1個の多面体を分離して考えてみると,分割多面体の幾何学的性格で最も重要なものは,多面体のいずれの頂点にも3本の稜が集まるということである.そしてこのような多面体で空間を充填すれば,1個の頂点は4個の多面体によって共有され,そこには必ず4本の稜が集まる形になる.

 各分割多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれvi,ei,fiとする.

  vi−ei+fi=2

分割多面体では1個の頂点に3本の辺が集まり,また1本の辺は2個の頂点を結ぶことから,

  2ei=3vi

また,集合多面体の頂点,辺,面,胞の数をそれぞれV,E,F,Cとすると

  Σ(vi−ei+fi)=2C

 空間分割の面の数などは一義的には決まらず,統計的にしか扱えないので,各多面体の平均頂点数,辺数,面数v1,e1,f1とおくと

  v1C=Σvi,e1C=Σei,f1C=Σfi

  v1C−e1C+f1C=2C

f1≒14が証明したい事柄である.なお,V≠Σvi,E≠Σei,F≠Σfiであることを注意しておく.

 平均的多面体の各面をp角形,各頂点にq面が会するとし,各辺にr個の多面体(p,q)が集まるものとする.境界多面体(p,q)の平均的な頂点数,辺数,面数は(v1,e1,f1)となる.また,頂点に集まる辺の中点を結んでできる多面体はq角形が1つの辺にr面会した多面体(q,r)になっていて,その図形は(v2,e2,f2)で表されるものとする.

 3次元の握手定理は多彩になって

  f1C=2F,v1C=f2V,v2V=2E,e1C=rE=pF=e2V

であるが,仮定により

  q=r=3,v2=4,e2=6,f2=4

であるから

  f1C=2F,v1C=4V,4V=2E,e1C=3E=pF=6V

 これを

  v1C−e1C+f1C=2C

に代入すると

  (2−p/3)F=2C

  f1=2F/C=12/(6−p)

  v1=4V/C=4/(p/6−1)

  e1=6V/C=6/(p/6−1)

 ここで位相幾何学的証明でなく,計量的証明が必要になるのであるが,3次元空間充填であるためには,等式

  cos(π/q)=sin(π/p)sin(π/r)

が成り立たなくてはならない.q=r=3を代入すると

  sin(π/p)=cot(π/3)=√(1/3)

  p=5.1044・・・

  f1=13.398・・・<14

  v1=22.796・・・

となる.

 なお,

  V−E+F−C=0

を用いても,

  f1=2F/C=12/(6−p)

を導き出すことは可能である.厳密にいうと

  V−E+F−C=1

であるが,何千という小さな泡の集合体を想定して,非常に多くの多面体を統計的に扱うので右辺は0としてかまわない.しかし,V−E+F−C=1を用いればもっとf1≒14に近づくであろう.

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