■相転移の幾何学(その36)

 FCCとHCPに対応するボロノイ細胞は準正多面体ではない.そのため,菱形12面体の3価の頂点に周りに集まる多面体数は4であるが,4価の頂点に周りに集まる多面体数は6となる.そこで,菱形12面体の双対である立方八面体を考えることになる.

===================================

 高次元FCC結晶の双対は

  {3,4}(010)→f=(12,24,14)

  {3,3,4}(0100)→f=(24,96,96,24)

  {3,3,3,4}(01000)→f=(40,240,400,240,42)

  {3,3,3,3,4}(01000)→f=(60,480,1120,1200,576,76)

 空間充填で考えるべきは頂点周りに集まるファセット数であるから,それは双対におけるファセット周りに集まる頂点数ということになる.すなわち,ファセットの頂点数である.

[1]立方八面体{3,4}(010)の場合は

  {4}(10)→頂点数4

  {3}(01)→頂点数3

[2]{3,3,4}(0100)の場合

  {3,4}(100)→頂点数6

{3,3}(010)→頂点数6

[3]{3,3,3,4}(01000)の場合

  {3,3,4}(1000)→頂点数8

{3,3,3}(0100)→頂点数10

[4]{3,3,3,3,4}(010000)の場合

  {3,3,3,4}(10000)→頂点数10

{3,3,3,3}(01000)→頂点数15

[5]{3,3,3,3,3,4}(0100000)の場合

  {3,3,3,3,4}(100000)→頂点数12

{3,3,3,3,3}(010000)→頂点数21

===================================

 最大頂点数は

[1]前者:2(n−1)

[2]後者:(n,2)=n(n−1)/2

このことから,FCCの頂点周りに集まる多面体数が2n以下と予想するのは早計であったと思われる.

 以上のことから,頂点周りに集まる多面体数は

[1]3次元では6以下

[2]4次元では8以下

[3]他はn(n−1)/2+1以下

になると思われる.

===================================