■相転移の幾何学(その32)

[参]Conway, Sloane: Sphere Packing, Lattices and Groups (SPLAG)

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【1】FCC

 生成行列(generating matrix)はその格子を生成するための基本ベクトルを示すものです.同書p112

  Mf =[−1,−1,0]

     [1,−1,0]

     [0,1,−1]

はFCCがベクトル[−1,−1,0],[1,−1,0],[0,1,−1]から生成される意味で,できあがる格子点は

  {(x,y,z)|x+y+z=偶数}になります.

 同書p2:頂点に隣接する頂点は(0,0,0)に対しては(±1,±1,0)の置換12個で,立方八面体をなし,穴は深い(±1,0,0)の置換6点とと浅い(±1/2,±1/2,±1/2)の置換8点とで,これらはボロノイ多面体である菱形12面体を作ります.

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【2】BCC

 同書p116

  Mb =[2,0,0]

     [0,2,0]

     [0,1,1]

はBCCがベクトル[2,0,0],[0,2,0],[1,1,1]から生成される意味で,できあがる格子点は

  {(x,y,z)|x,y,zはすべて偶数またはすべて奇数}になります.

 同書p34:中心(0,0,0)の隣りの頂点は最近隣の(±1,±1,±1)8点ですが,次に近い(±2,0,0)の置換6点を加えて,菱形12面体になります.穴は(0,1/2,1)などの置換,計24点で,ボロノイ図形である切頂八面体(ケルビンの立体)の頂点をなします.

 これからFCCの穴(ボロノイ図形の頂点)がBCCを作るという関係が生じます.

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【3】FCCとBCCの変換

 BCCの基底ベクトルをFCCの基底ベクトルに移すことは可能です.ベクトル[−1,−1,0],[1,−1,0],[0,1,−1]をそれぞれベクトル[2,0,0],[0,2,0],[1,1,1]に移すには

  Mb=WMf→W=Mb・Mf^-1

を計算すればよいのです.

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