■相転移の幾何学(その28)
【1】鍛冶屋の物理学
もう一度発想の原点に戻るが,球形の素材を型に詰め込んでおいて,それをぎゅっとつぶすという過程を考えてみる.結晶化の過程では,実際,このようなことが起こっていると考えられるが,その場合,最密充填から最疎被覆には球の中心点が面心立方格子から対心立方格子に移行しなければならない.このような移行はどのようにしたら可能になるのだろうか? 連続的それとも飛躍的におこなわれるのだろうか?
最密充填から最疎被覆への状態移行では,球の並進運動と同時に空間の連続的な回転運動が起こらなければならないが,当該の多面体σは最密充填と最疎被覆の間の相転移のメカニズムをある程度解き明かしてくれるはずである.
したがって,菱形十二面体と切頂八面体の間の相互移行が可能な立体蝶番返しを作ることができれば(パズル愛好家がよろこぶものになるばかりでなく)直接,最密充填と最疎被覆の間の相転移のメカニズムをある程度解き明かしてくれるのではないかと考えられる.
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波は空間的に拡がったもの,粒子は集中したもの,波は重なり合い互いに通過する性質があるが,粒子は衝突して方向が変わるものである.波は膨張したり収縮したり「変身」するもの,粒子は「変身」しないものをイメージしていただきたい.そうすると,相転移の粒子性を解き明かすためのモデルが「ペンタドロン」であって,一方,相転移の波動性のメカニズムを解明するためのモデルが平行多面体同士の「変身立体」と考えられるのである.
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