■相転移の幾何学(その3)
氷結・溶解・蒸発・結露・昇華など,相転移(phase transition)とは,あるシステムが(特定のパラメータが変化することで)ひとつの状態から別の状態に突然変化することをいいます.超伝導化や磁化の過程でも起こりますが,平行多面体による相転移モデルはそのひとつのモデルとなります.
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【1】平行多面体による相転移モデル
ところで,結晶格子は不変ではなく,たとえば金属結晶に鍛冶(高エネルギー下で変形させる)を施すと面心立方格子(菱形12面体)から体心立方格子(切頂8面体)に移行する(相転移).ミクロな物理現象では個々の原子の振る舞いを直接確認することはできないから,状態移行を説明するモデルが必要になる.
その途中を仲介する多面体やメカニズムが存在するはずであると考えるのは自然な発想であろう.波は膨張したり収縮したり「変身」するもの,粒子は「変身」しないものをイメージしていただきたい.そうすると,相転移の粒子性を解き明かすためのモデルが「ペンタドロン」であって,一方,波動性のメカニズムを解明するためのモデルが平行多面体同士の「変身立体」と考えられるのである.
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【2】模型で考えるということ
自然界を観察するとしばしば相転移現象に出くわす.氷結・溶解・蒸発・結露・昇華などがその例であるが,ここでは金属結晶の相転移を取り上げる.
前述したように,金属結晶の格子は不変ではなく,鍛冶(高エネルギー下で変形させる)を施すと面心立方格子から体心立方格子に移行する.これは最密充填と最疎被覆の間の相転移と考えられ,対応するボロノイ細胞は菱形12面体から切頂8面体へと再編される.
相転移の状態移行では元素の並進運動と同時に空間の連続的な運動が起こらなければならない.すべての相転移に通用する原理があるはずであるが,この仕組みはまだ解明されていない.まるで科学者に対して挑んでいるかのように思える.
ミクロな物理現象では個々の原子の振る舞いを直接確認することはできないから,状態移行を説明するモデルが必要になる.そのモデルが平行多面体の間の「変身立体」である.
もし,菱形十二面体と切頂八面体の間の相互移行が可能な立体蝶番返しを作ることができれば(パズル愛好家がよろこぶものになるばかりでなく)直接,最密充填と最疎被覆の間の相転移のメカニズムを解き明かしてくれるので,物理現象にも応用可能ということになるわけである.
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ところで,エリック・ドメインは17才のとき,直線の辺からなる図形は1枚の紙を折り畳んでハサミを1回だけ入れるとどんなものも作れることを証明した.20才にしてMITの教授になったほどの天才児は,図形の裁ち合わせの一般化を考えた.
[Q]直線の辺をのつ任意の図形を切り分け,できたピースを蝶番で繋いで,直線の辺をもつ面積の等しい別の図形にできるだろうか?
[A]yes (2008年,27才のとき)
科学にとって,模型で考えるということは重要な意味をもっている.ミクロな物理現象では個々の原子の振る舞いを直接確認することはできないから,状態移行を説明するモデルが必要になる.そのモデルが平行多面体の間の「変身立体」である.エリック・ドメインの蝶番付き裁ち合わせの3次元への一般化は平行多面体の「変身立体」なのである.
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【3】平行多面体による相転移モデル(その2)
模型で考えるとはいっても
[1]木構造
[2]網構造
[3]環構造
[4]穴なし環構造
など,種々の模型が考えられるところである.
木構造は最も単純素朴なモデルであるが,絡まりやすい欠点がある.網構造は木構造と環構造の中間的なモデルである.環構造は連続回転できるモデルであるが,穴なし環構造と較べるとまだ体積変化が大きいといえる.体積変化が小さく,実際と最も乖離が少ないと思われるのが穴なし環構造であって,その代表例がエンドレス・キューブである.
立方体を2×2×2に8等分する.8個の小立方体を8カ所で繋げる.連結の位置関係は実におもしろく,そのように繋げばバラバラになることなしに,6面×8個=48面すべてをみせることができる.たとえば,表面24個にロンドンの観光写真を載せれば,裏面(隠れている面)24個にパリの観光写真を載せることができるのである.
立方体を3×3×3に27等分したのでは,裏返しはできないと思われる.一方,cubic symmetryをもつ立体(たとえば平行多面体5種)であれば,8等分は可能で,裏返しも可能と予想される.もちろん,回転の途中でひっかかってしまうことだってあるかもしれないが,適当に伸縮すればそれを回避できると思う.興味のある読者は自作して調べられたい.
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