■n軸構造(その5)

 空間充填18面体は4軸構造を基本形としていて,4軸はそれぞれ(109.471°(cosθ=−1/3)をなす.そして,回転対称軸同士が交わらずにねじれの位置にあり,3回対称軸の周りで120°回転させると回転操作に伴って4軸がどれかの4軸に平行配置されている様に移るという関係になっている.今回のコラムでは4軸構造を回転操作によって特徴づけることにしたい.

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【1】回転行列

 空間を回転させる行列で直交変換となっているパラメータ数が3つの「回転」かつ「直交」行列として

  (1)オイラー角に基づくもの

  (2)ロール・ピッチ・ヨーに基づくもの

がある.(1)はz軸まわりの回転α→新しいy軸まわりの回転β→新しいz軸まわりの回転γ,(2)はz軸まわりの回転φ→新しいy軸まわりの回転θ→新しいx軸まわりの回転ψの3段階によって表すもので,両者に本質的な違いはない.

x,y,z軸の周りの回転では使いにくいので,任意の軸の周りの回転行列を探してみたところ,単位ベクトル

  n=(α,β,γ)

を回転軸とし,その周りに正の回転方向にθだけ回転する回転行列が見つかった.それはα,β,γは方向余弦で,α^2+β^2+γ^2=1を満たすものとして

  R(1,1)=α^2(1-cosθ)+cosθ

  R(2,2)=β^2(1-cosθ)+cosθ

  R(3,3)=γ^2(1-cosθ)+cosθ

  R(1,2)=αβ(1-cosθ)+γsinθ

  R(2,1)=αβ(1-cosθ)-γsinθ

  R(1,3)=αγ(1-cosθ)-βsinθ

  R(3,1)=αγ(1-cosθ)+βsinθ

  R(2,3)=βγ(1-cosθ)+αsinθ

  R(3,2)=βγ(1-cosθ)-αsinθ

で表される回転行列である.

 回転操作の具体的表式を求めてみよう.θ=0°のとき,

    [1,0,0]

  R=[0,1,0]

    [0,0,1]

θ=120°のとき,

    [3α^2/2-1/2,3αβ/2+√3γ/2,3αγ/2-√3β/2]

  R=[3αβ/2-√3γ/2,3β^2/2-1/2,3βγ/2+√3α/2]

    [3αγ/2+√3β/2,3βγ/2-√3α/2,3γ^2/2-1/2]

θ=−120°のとき,

    [3α^2/2-1/2,3αβ/2-√3γ/2,3αγ/2+√3β/2]

  R=[3αβ/2+√3γ/2,3β^2/2-1/2,3βγ/2-√3α/2]

    [3αγ/2-√3β/2,3βγ/2+√3α/2,3γ^2/2-1/2]

これらをそれぞれO,R,Qとする.

  A1=1/√3[1,1,1]

  A2=1/√3[−1,1,1]

  A3=1/√3[1,−1,1]

  A4=1/√3[1,1,−1]

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[1]n=A1のとき,α=1/√3,β=1/√3,γ=1/√3

    [0,1,0]      [0,0,1]

  R=[0,0,1]    Q=[1,0,0]

    [1,0,0]      [0,1,0]

  O1:(x,y,z)→(x,y,z)

  R1:(x,y,z)→(y,z,x)

  Q1:(x,y,z)→(z,x,y)

また,

  O1:A1→A1,A2→A2,A3→A3,A4→A4

  R1:A1→A1,A2→A4,A3→A2,A4→A3

  Q1:A1→A1,A2→A3,A3→A4,A4→A2

[2]n=A2のとき,α=−1/√3,β=1/√3,γ=1/√3

    [0,0,−1]      [0,−1,0]

  R=[−1,0,0]    Q=[0,0,1]

    [0,1,0]       [−1,0,0]

  O2:(x,y,z)→(x,y,z)

  R2:(x,y,z)→(−z,−x,y)

  Q2:(x,y,z)→(−y,z,−x)

また,

  O2:A1→A1,A2→A2,A3→A3,A4→A4

  R2:A1→−A4,A2→A2,A3→−A1,A4→A3

  Q2:A1→−A3,A2→A2,A3→A4,A4→−A1

[3]n=A3のとき,α=1/√3,β=−1/√3,γ=1/√3

    [0,0,1]       [0,−1,0]

  R=[−1,0,0]    Q=[0,0,−1]

    [0,−1,0]      [1,0,0]

  O3:(x,y,z)→(x,y,z)

  R3:(x,y,z)→(z,−x,−y)

  Q3:(x,y,z)→(−y,−z,x)

また,

  O3:A1→A1,A2→A2,A3→A3,A4→A4

  R3:A1→−A2,A2→A4,A3→A3,A4→−A1

  Q3:A1→−A4,A2→−A1,A3→A3,A4→A2

[4]n=A4のとき,α=1/√3,β=1/√3,γ=−1/√3

    [0,0,−1]     [0,1,0]

  R=[1,0,0]    Q=[0,0,−1]

    [0,−1,0]     [−1,0,0]

  O4:(x,y,z)→(x,y,z)

  R4:(x,y,z)→(−z,x,−y)

  Q4:(x,y,z)→(y,−z,−x)

また,

  O4:A1→A1,A2→A2,A3→A3,A4→A4

  R4:A1→−A3,A2→−A1,A3→A2,A4→A4

  Q4:A1→−A2,A2→A3,A3→−A1,A4→A4

 このように4軸をどれかの4軸に重ね合わせる回転操作全体は正4面体群をなし,その位数は12である.

 なお,空間充填18面体の単位ブロックとなる8個の18面体の組み上げ方には何種類かあるが,18面体には8角形面が6面あるため,いずれも1個の周りに6個の18面体が8角形面で接し,この7個に中心の18面体と同じ軸のものをもう1個どこかにつけ加えた8個が単位ブロックになっていて,8個のうち2個ずつが同軸になる.

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【2】回転+平行移動

 上記の回転操作は自分自身に移すもの(Ai→Aj)であるが,実際の変換では定点ベクトルも含めた

  Pi=tAi+Bi

を変換する必要がある.その場合,変換操作の表式は回転操作に平行移動が加わったものになる.

 たとえば,P2=tA2+B2を回転対称軸とする120°回転R2では,W=(x,y,z)は

  R2(W−B2)+B2=R2W−R2B2+B2

に移る.したがって,W=P3=tA3+B3は

  R2P3−R2B2+B2=R2(tA3+B3)−R2B2+B2=−tA1+R2B3−R2B2+B2

に移される.R2A3=−A1であることは既に求めたが,R2B3,R2B2も必要となることがわかるだろう.

  B2=d/√2[0,1,−1]

  B3=d/√2[−1,0,1]

  B4=d/√2[1,−1,0]

  B23=d/√2[1,1,0]

  B34=d/√2[0,1,1]

  B42=d/√2[1,0,1]

  R1:B2→B4,B3→B2,B4→B3

  Q1:B2→B3,B3→B4,B4→B2

  R2:B2→B42,B3→−B4,B4→−B34

  Q2:B2→−B23,B3→B34,B4→−B3

  R3:B2→−B42,B3→B23,B4→−B2

  Q3:B2→−B4,B3→−B34,B4→B42

  R4:B2→−B3,B3→−B23,B4→B34

  Q4:B2→B23,B3→−B2,B4→−B42

 以上で,解析のための道具立てがほぼ出揃ったと考えられる.

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【3】雑感

 (その3)において,Ai⊥BiとなるようにBiを決めたため,

  B2=d/√2[0,1,−1]

  B3=d/√2[−1,0,1]

  B4=d/√2[1,−1,0]

とおいたが,これらはA1にも直交することから,

  B21=d/√2[0,1,−1]

  B31=d/√2[−1,0,1]

  B41=d/√2[1,−1,0]

とすべきだったかもしれない.

 そうすれば,AiとAjの両方に直交するベクトルをBijと定めたことと整合性がとれるからである.

  B23=d/√2[1,1,0]

  B34=d/√2[0,1,1]

  B42=d/√2[1,0,1]

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