■準周期的構造(その5)

【5】まとめ

 5回対称性をもった正多角形や正多面体は2次元平面や3次元空間を充填しません.しかし,一定の間隙を許すことにすると平面や空間を無限に連結することができます.4次元空間内で,正120胞体あるいは正600胞体を連結すると周期的にも非周期的にも無限に連結するのですが,その場合,3次元空間内への投影は3次元空間を周期的にも非周期的にも被覆することができます.なお,5次元以上の空間には5回対称性をもった正多胞体は存在しません.

 2種類の黄金平行多面体を用いて,3次元を隙間なく埋める非周期的構造を作ることができるのですが,この黄金平行多面体による充填図形の平面への投影はペンローズ・パターンと呼ばれる準周期性平面充填となります.すなわち,ペンローズのタイル貼りは,三次元空間を2種類の黄金菱面体で非周期的に埋めつくしたときの平面への投影図であり,5回対称性という物質の新しい状態を2次元的に模似したものになっています.

 一般にn次元平行多胞体は1種類(あるいは何種類か)でn次元空間を周期的に充填するのですが,それを3次元空間内や2次元平面上に平行投影して適当に隠線処理すると平行多面体や平行多角形による非周期的な充填図形が得られることになります.その際,正10角形を構成する2種類の菱形で構成される準周期性平面充填をペンローズ・パターンというのですが,それに対して,正8角形を構成する2種類の菱形(正方形を含む)で構成される準周期性平面充填はアンマン・パターンと呼ばれるタイル貼りになっています.

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