■原子の構造(その22)

 量子統計力学では,

[1]ポリアの壷のような量子状態が与えられていて,壷は区別できるが粒子は区別できない

[2]エネルギーの低い状態からほぼ順番に素粒子によって占められる

[3]ある状態に1個しか入れない場合と,何個でも入れる場合がある.

エネルギー準位:e1,e2,e3,・・・

量子状態の個数:g1,g2,g3,・・・

粒子数    :n1,n2,n3,・・・

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【1】フェルミ・ディラック分布

 ある量子状態に1個しか入れない場合,gk個の状態をnkこの区別できない粒子が占める仕方は,選ばれた量子状態数=粒子数となるから

  (gk,nk)=gk!/nk!(gk-nk)!

 すべてのエネルギー準位にわたって積をとると,全場合の数Gは

  G=Π(gk,nk)

全粒子数N,全エネルギーEは

  N=Σnk,E=Σnkek

 全粒子数,全エネルギーを固定した条件下で,Gを極大化する.

  d(logG)=dG/G=-Σ{lognkdnk-log(gk-nk)dnk}

  ここでは,スターリングの公式

   logx!~xlogx→d(logx!)~(logx)dx

を用いている.

 さらに,ラグランジュの未定乗数法を用いて,

  Σ{lognk/(gk-nk)+α+βek}dnk=0

が得られるから,

  lognk/(gk-nk)=exp(-α-βek)

  nk=gk/{exp(α+βek)+1}

 それぞれの量子状態の平均粒子数は

  nk/gk=1/{exp(α+βek)+1}

 また,統計力学的にα=-μ/kT,β=1/kT,kはボルツマン定数なので,多数のN個の粒子をk=0~∞までの量子状態に配置したとき,それぞれの粒子がk番目の量子状態に配置する確率は

  1/N・1/{exp(ek-μ)/kT+1}

  N=Σ1/{exp(ek-μ)/kT+1}

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【2】ボーズ・アインシュタイン分布

 ある量子状態に制限なしに入れる場合,gk個の状態をnkこの区別できない粒子が占める仕方は,

  <gk,nk>=(gk+nk-1)!/nk!(gk-1)!

 すべてのエネルギー準位にわたって積をとると,全場合の数Gは

  G=Π<gk,nk>

全粒子数,全エネルギーを固定した条件下で,Gを極大化する.

  d(logG)=dG/G=-Σ{lognkdnk-log(gk+nk)dnk}

 さらに,ラグランジュの未定乗数法を用いて,

  Σ{lognk/(gk+nk)+α+βek}dnk=0

が得られるから,

  lognk/(gk+nk)=exp(-α-βek)

  nk=gk/{exp(α+βek)-1}

 それぞれの量子状態の平均粒子数は

  nk/gk=1/{exp(α+βek)-1}

以下,同様に

  1/N・1/{exp(ek-μ)/kT-1}

  N=Σ1/{exp(ek-μ)/kT-1}

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