■原子の構造(その14)

 原子の中には,原子番号に等しいの数の電子があります.電子のはいる容れ物を原子軌道といい,原子核に近い順(エネルギーの低い順)に1,2,3,・・・という主量子数nが割り振られています.

 n=1では球対称の1s軌道しかありません.ここに2個の電子が入ってK殻を作ります.n=2では球対称の1s軌道の他に細長い3個の軌道2px,2py,2pzはあって,4個の軌道に2個ずつ電子が入ってL殻を作ります.さらに大きい原子では,n=3では1個の3s,3個の3p,5個の3d軌道が用意されています.s,p,d,f,・・・軌道の種類は2l+1(l=0,1,2,3,・・・)となっています.

 全角運動量量子数lに対応する電子状態には,s(l=0),p(l=1),d(l=2),f(l=3)などの記号がついています.その語源は分光学上の特徴,すなわちスペクトル線の現れ方に由来するもので,たとえば,sはsharp(周波数の範囲が極めて狭い),pはprincipal(中心的な),dはdiffuse(ぼやけた),fはfundamental(基本的な)などの頭文字です.以下g,h,i,・・・と続きます.

  [参]細矢治夫「トポロジカル・インデックス」日本評論社

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【1】1次元原子の電子軌道

 以上の話は3次元原子の電子軌道のことであって,仮想的な世界,たとえば1次元の世界の原子では,sは1個,pは1個で,d以降は0である.

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【2】2次元原子の電子軌道

 2次元の世界の原子では,sは1個,p,d,f,・・・すべて2個である.

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【3】3次元原子の電子軌道

 3次元の世界の原子では,sは1個,pは3個,dは5個,以降は2l+1個の軌道が用意されている.

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【4】4次元原子の電子軌道

 3次元の世界の原子では,sは1個,pは4個,dは9個,以降は(l+1)個の軌道が用意されている.軌道の種類は平方数なのである.

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【5】n次元原子の電子軌道

  [参]細矢治夫「トポロジカル・インデックス」日本評論社

によれば,このようなマジックナンバーはn次元のシュレジンガー方程式を解けば機械的に現れるとのことである.

   l\n 1   2   3   4   5

(s)0   1   1   1   1   1

(p)1   1   2   3   4   5

(d)2   0   2   5   9  14

(f)3   0   2   7  16  30

(g)4   0   2   9  25  55

 (l,n)の数はリュカ数をパスカルの三角形のように並べたもので,上隣と左隣の数の足し算

  (l,n)=(l−1,n)+(l,n−1)

あるいは,同じことであるが,左隣の列和

  (l,n)=Σ(k,n−1)   (k=0〜n)

として得られる.

 4次元では,奇数の和

  1+3+5+・・・+(2l+1)=(l+1)^2

5次元では,平方数の和

  1+4+9+・・・+(l+1)^2=(l+1)(l+2)(2l+3)/6

なのである.

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