■オクテット・トラス構造(その6)
一種類の合同な正多面体による空間充填では立方体だけが空間充填形なのですが,もし2種類以上を使ってよければ,正四面体と正八面体の二面角が互いに補角ですから,両者を組み合わせて空間充填が可能になります.正多面体同士の組合せでは,正四面体と正八面体を組み合わせたものだけが空間を充填します.
2種類以上の多面体による空間充填例は正四面体と正八面体の組み合わせ以外にもたくさん知られています.たとえば,切頂四面体と正四面体の組み合わせ,切頂立方体と正八面体の組み合わせ,立方八面体と正八面体の組み合わせ,切頂八面体と大菱形立方八面体と立方体の組み合わせ,小菱形立方八面体と立方八面体と立方体の組み合わせ等々.
プラトン立体とアルキメデス立体による空間充填を分類してみましょう.
[1]プラトン立体のみによるもの・・・立方体,正四面体+正八面体
[2]アルキメデス立体のみによるもの・・・切頂八面体,
[3]プラトン立体とアルキメデス立体の組み合わせによるもの・・・切頂四面体+正四面体,切頂立方体+正八面体,切頂八面体+大菱形立方八面体+立方体,小菱形立方八面体+立方八面体+立方体
[4]アルキメデス立体とアルキメデス角柱によるもの
[5]アルキメデス角柱のみによるもの
立方八面体+正八面体も、もちろん空間充填可能ですが、これは切頂立方体+正八面体の変形としました。正四面体+正八面体の変形=オクテット・トラスとみることもできるかもしれません。
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中川宏さんはジョンソン・ザルガラー多面体J91が加わった空間充填を発見しました.J91は4個の正五角形面,2個の正方形面,8個の正三角形面をもつ双月形双円形体として知られており,菱形12面体と同じ2回回転対称性をもっています.J91の正三角形面を合わせるように繋いでいくと,立方体と正十二面体の隙間が現れます.すなわち,J91・立方体・正十二面体の3種類の立体で空間充填することが可能であることがわかったのですが,これまで知られていなかった空間充填例が見つかったことは奇跡的といってもよく,これこそ非常に単純だが深淵な数学的発見が今日なお可能である一つの例となっているのです.
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