■フェルマーの最終定理と有限体(その218)

【補】3次曲線のj-不変量

 6つの有理関数

  f1(x)=x,f2(x)=1−x,f3(x)=1/x,f4(x)=1/(1−x),f5(x)=(x−1)/x,f6(x)=x/(x−1)

を考えます(x≠0,1).2つの関数の合成,たとえば,

  f2・f3(x)=f2(f3(x))=1−1/x=(x−1)/x=f5(x)

ですから,f2・f3=f5とします.

 すると,この6つの関数は群となります.

     | f1  f2  f3  f4  f5  f6

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  f1 | f1  f2  f3  f4  f5  f6

  f2 | f2  f1  f5  f6  f3  f4

  f3 | f3  f4  f1  f2  f6  f5

  f4 | f4  f3  f6  f5  f1  f2

  f5 | f5  f6  f2  f1  f4  f3

  f6 | f6  f5  f4  f3  f2  f1

 なお,位数がnの有限体はnが素数と素数の累乗の場合だけに限られます.すなわち,位数が2,4,8,16,32,・・・の有限体,3,9,27,81,243,・・・の有限体はあるのですが,6や15の有限体はないのです.

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 非特異3次曲線の標準型:  y^2=x(x−1)(x−λ)

のj-不変量は

  j=2^8(λ^2−λ+1)^3/λ^2(λ−1)^2

によって定義されます.λ=−1のときj=1728,λ=−ζ6(1の6乗根)のときj=0となります.

 jー不変量はモジュラー不変量とも呼ばれ,

  j(λ)=j(1−λ)=j(1/λ)

 =j(1−1/λ)=j(1/(1−λ))=j(λ/(1−λ))

ですから,4個の点{0,1,λ,∞}の入れ替えに依存しないinvariantで,最も単純で重要な保型関数と考えられます.

 複比を

  λ={(λ0−λ2)/(λ1−λ2)}/{(λ0−λ3)/(λ1−λ3)}

によって定義すると,λiの順序を変えるとλの値は変わります.すなわち,{λ0,λ1,λ2,λ3}からつくられる複比の値は,

  λ,1−λ,1/(1−λ),1/λ,λ/(λ−1),(λ−1)/λ

の6つのどれかに移ります.

 この順序による曖昧さを消すために,λの6つの分数変換の不変式をとって,

  j=2^8(λ^2−λ+1)^3/λ^2(λ−1)^2

とおくのです.複比は一次分数変換で不変であり,jもまた射影変換で不変です.(直線上の4点の複比は射影によって不変である)

 なお,

  j(λ)=j(1−λ)=j(1/λ)

が成り立てば,あとの等式はこの2つから導かれますから,有理関数

  (λ^2−λ+1)^3/λ^2(λ−1)^2

が本質的であって,係数2^8には本質的な意味はありません.実際,

  (x^2−x+1)^3/x^2(x−1)^2=(λ^2−λ+1)^3/λ^2(λ−1)^2

と,変数xの方程式を考えると,

λ^2(λ−1)^2(x^2−x+1)^3−(λ^2−λ+1)^3x^2(x−1)^2=0

はλ≠0,1より,6次方程式となり,

  λ,1−λ,1/(1−λ),1/λ,λ/(λ−1),(λ−1)/λ

のどれを代入しても成り立ちます.重複が生ずるのは

  λ^2−λ+1=0,λ=1/2,λ=−1,λ=2

の場合に限ります.

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