■フェルマーの最終定理と有限体(その150)
【1】重さ12の保型形式
保型形式が最初に現れたのは,1750年のオイラーによる五角数定理
Π(1-q^n)=Σ(-1)^mq^(m(3m-1)/2)) m(3m-1)/2は五角数
ですが,これを3乗した形の展開結果はかなり簡単になり,ヤコビの公式(1829年)
Π(1-q^n)^3=Σ(-1)^m(2m+1)q^((m^2+m)/2) (m^2+m)/2は三角数
が得られます.これらはヤコビの3重積公式の特別な場合になっています.
ヤコビの公式を経て,数論はラマヌジャンの保型形式論の時代(24乗の場合)に突入します.オイラー数(オイラーの分割数)
f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)
=Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・
すなわち,Π(1-x^n)^(-1)は分割数p(n)の母関数なのですが,それと同様にして,ラマヌジャン数が定義できます.
f(x)=xΠ(1-x^n)^24=x{(1-x)(1-x^2)(1-x^3)・・・}^24
=Στ(n)x^n=τ(1)x+τ(2)x^2+τ(3)x^3+・・・
ラマヌジャンは,デデキントのイータ関数(重さ1/2をもつモジュラー関数),
η(z)=q^(1/24)Π(1-q^n),q=exp(2πiz)
とおくと
Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24=Στ(n)q^n
zは虚部が正の複素数で,q=exp(2πiz)
を考え,そのフーリエ係数τ(n)を計算しました.
τ(1)=1,τ(2)=-24,τ(3)=252,τ(4)=-1472,τ(5)=4830,τ(6)=-6048,
τ(7)=-16744,τ(8)=84480,τ(9)=-113643,τ(10)=-115920,
τ(11)=534612,τ(12)=-370944,・・・
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無限積をベキ級数に展開した式(フーリエ展開)が登場しましたが,このΔ(z)は,重さ12の保型形式
Δ(az+b/cz+d)=(cz+d)^12Δ(z)
と呼ばれるものになっていて,オイラーの五角数公式を拡張した24乗版と考えられます.
ラマヌジャン数は,オイラーの分割数のアナローグであり,
(1)mとnが素ならば,τ(m)τ(n)=τ(mn)
τ(2)*τ(3)=-6048=τ(6),τ(2)*τ(5)=-115920=τ(10)
τ(3)*τ(4)=-370944=τ(12),τ(2)*τ(9)=2727432=τ(18)
τ(4)*τ(5)=-7109760=τ(20),τ(3)*τ(7)=-4219488=τ(21)
(2)τ(p^(n+1))-τ(p^n)τ(p)=-p^11τ(p^(n-1))
(3)τ(n)=σ11(n)(nの約数の11乗の総和) (mod 691)
など驚くような性質をもっています.
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