■フェルマーの最終定理と有限体(その125)
【1】オイラーの分割数
ラマヌジャンはp(n)が満たす合同式について
p(5n+4)=0 mod5
p(7n+5)=0 mod7
p(11n+6)=0 mod11
p(599)=0 mod5^3
p(721)=0 mod11^2
を予想し,それらを証明しています.
さらに,
d=5^a7^b11^c かつ 24n=1 (mod d)
ならば,
p(n)=0 (mod d)
を予想していますが,n=243の場合,
p(243)=133978259344888
は,24・243=1 (mod 343)であるにもかかわらず,d=7^3=343では割り切れない.(この予想は誤りであった.)
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【2】オイラーの分割数の近似式
オイラーの分割数p(n)のおよその大きさを決めるのは難しい問題でしたが,1918年,ハーディーとラマヌジャンによって,円周法による漸近近似式:
p(n) 〜 1/4n√(3)exp(π√(2n/3))
が与えられています.
n=243の場合,p(243)=133978259344888に対して
p(n)〜exp(π√(2n/3))/4n√3〜1.38×10^14
その後,分割関数はラーデマッハーによって修正され,完全な明示公式
p(n)=1/π√(2)Σk^(1/2)Ak(n)d/dn{sinh(πλn√(2/3))/λn}
λn=√(n-1/24),Ak(n)には1の24乗根が関係する
が与えられました(1937年).
コラム「分割数の漸近挙動」では,p(n)の粗いがそれなりによい評価式を求めていて,それによると
exp(2√n)/exp(5)n^2≦p(n)≦exp(π√(2/3n))
したがって,十分大きなnに対しては
exp(c1√n)≦p(n)≦exp(c2√n)
となる評価が得られたことになります.ラマヌジャンの結果より粗いのですが,関数の増加に対するオーダーがわかればそれでよしとしましょう.
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【3】分割数の近似式・再考
実は,円周法に基づく漸近公式の結果を正確に証明するだけでも,長くてこみ入った理論が必要になります.そこで漸近公式の概要だけを簡単に述べますが,σ(k)をkの約数の和とすると,p(n)に対する漸化式
p(n)=1/nΣσ(k)p(n-k)
において,σ(k)の漸近的振る舞い
1/n^2Σσ(k)〜π^2/12
を用いると,nが大きい場合の分割数の漸近挙動
p(n)〜exp(π√(2n/3))/4n√3
を得ることができます.
このことから,p(n)は準指数関数と考えることができます(p(n)^(1/n)→1).参考までに記しますが,
p(n)≦p(n-1)+p(n-2)
が成り立つことより,分割数の増大速度はファイボナッチ数で上から抑えられることが示されます.したがって,黄金比φ=(√5+1)/2とおくと上界は
p(n)<φ^n.
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