■フェルマーの最終定理と有限体(その118)
Ik=∫(0,∞)x^kdx/(exp(2πx)−1)
=∫(0,∞)x^k(Πexp(−2πnx))dx
=Σ1/(2πn)^k+1∫(0,∞)y^kexp(−y)dy
=ζ(k+1)Γ(k+1)/(2π)^k+1
=Bk+1/2(k+1)
が成り立ちます.
これを離散化するとさらにおもしろくなります.
Sk=Σ(1,∞)n^k/(exp(2πn)−1)
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ラマヌジャンは
Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504
Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π
Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240
Σ1/n{exp(2πn)-1}=-π/12-1/2log(ω/√2π)
も証明している.
I1=1/24に対してS1=1/24-1/8πである.有名なラマヌジャンの等式であるが,不思議なことにk4m+1≧5のときはSk=Ikとなる.
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ここで,πとωはそれぞれ,
π=2∫(0,1)1/√(1-x^2)dx=3.14159・・・(円周率)
ω=2∫(0,1)1/√(1-x^4)dx=2.62205・・・(レムニスケート周率)
∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)
ガウスの算術幾何平均
M(a,b)=π/2/∫(0,π/2)dθ/(a^2cos^2θ+b^2sin^2θ)^(1/2)
より
M(√2,1)=π/ω
また,レルヒの公式
Δ(i)=(ω/π√2)^12=Γ^24(1/4)/2^24π^18
E4(i)=3(ω/π)^4=3Γ^8(1/4)/64π^6
もこの兄弟分にあたる.
Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504
に対して,第0項から始まるように,パラメータをずらすと
Σ(n+1)^5/{exp(2π(n+1))-1}
この級数の項比は
an+1xn+1/anxn=(n+2)^5/(n+1)^5・{exp(2π(n+1))-1}/{exp(2π(n+2))-1}
であるから超幾何級数では表せないことがわかる.
それではどうやってこれらの級数を証明したらいいのだろうか? 杉岡幹生氏に教えてもらったのだが,アイゼンシュタイン級数
E6 → Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504
E2 → Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π
E4,ラマヌジャンのΔ → Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240
を用いればこれらを証明できるということであった.
とはいえ自力では証明できなかったので,
[参]黒川信重・栗原将人・斉藤毅「数論U,Fermatの夢と類体論」岩波書店
からの受け売りの証明を記しておく.
Ek(-1/z)=z^kEk(z) (双対性)
にz=iを代入すると−1/i=iになることを利用するのである.
Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504
(証)E6(-1/z)=z^6E6(z)にz=iを代入すると,E6(i)=i^6E6(i)=−E6(i)よりE6(i)=0
E6(i)=1−504Σσ5(n)exp(-2πn)=1−504Σn^5/{exp(2πn)-1}
Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π
(証)E2(-1/z)=z^2E2(z)+6z/πiにz=iを代入すると,E2(i)=-E2(i)+6/πよりE2(i)=3/π
Σσ(n)exp(-2πn)=Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π
Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240
(証)レルヒの公式より,E4(i)=3(ω/π)^4
E4(i)=1+240Σσ3(n)exp(-2πn)=1+240Σn^5/{exp(2πn)-1}
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[補]アイゼンシュタイン級数
SL(2,Z)群上,最も単純な(基本的・古典的)保型形式は重さkのアイゼンシュタイン級数
Ek=1/2Σ1/(mz+n)^k
m,nは互いに素,kは整数4,6,8,・・・(4以上の偶数)
です.すなわち,アイゼンシュタイン級数は変換公式
Ek(az+b/cz+d)=(cz+d)^kEk(z)
c,dは互いに素,ad−bc=1
を満たすというわけです.
保型性の定義から
Ek(z+1)=Ek(z)
Ek(-1/z)=z^kEk(z)
はすぐわかりますが,前者は周期性,後者は双対性と理解することができます.
Ek(z+1)=Ek(z) (周期性)
Ek(-1/z)=z^kEk(z) (双対性)
この保型性の定義は周期性f(x+1)=f(x)を含むので,任意の保型形式はq=exp(2πiz)とするフーリエ展開をもち,
E4(z)=1+240Σσ3(n)q^n
E6(z)=1−504Σσ5(n)q^n
E8(z)=1+480Σσ7(n)q^n
E10(z)=1−264Σσ9(n)q^n
E12(z)=1+65520/691Σσ11(n)q^n
E14(z)=1−24Σσ13(n)q^n
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σk(n)はnの正の約数のk乗和
ベルヌーイ数を用いると
Ek(z)=1−2k/BkΣσk-1(n)q^n
また,ζ(1-k)=−Bk/kにより
Ek(z)=1−2/ζ(1-k)Σσk-1(n)q^n
とも表されます.これらはすべてのσk(n)を教えてくれる母関数であり,それが保型性を示しているという事実が,モジュラー関数は深淵といわれる所以です.
アイゼンシュタイン級数を用いると
Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24
=q-24q^2+252q^3-1472q^4+5483q^5+・・・
は
Δ(z)=1/1732(E4(z)^3-E6(z)^2)
と表されます.
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