■フェルマーの最終定理と有限体(その72)

【1】3次曲線のj-不変量

 3次曲線:y^2=x(x−1)(x−λ)

のj-不変量は

  j=2^8(λ^2−λ+1)^3/λ^2(λ−1)^2

によって定義されます.λ=−1のときj=1728,λ=−ζ6(1の6乗根)のときj=0となります.

 jー不変量はモジュラー不変量とも呼ばれ,

  j(λ)=j(1−λ)=j(1/λ)

 =j(1−1/λ)=j(1/(1−λ))=j(λ/(1−λ))

ですから,4個の点{0,1,λ,∞}の入れ替えに依存しないinvariantで,最も単純で重要な保型関数と考えられます.なお,

  j(λ)=j(1−λ)=j(1/λ)

が成り立てば,あとの等式はこの2つから導かれますから,有理関数

  (λ^2−λ+1)^3/λ^2(λ−1)^2

が本質的であって,係数2^8には本質的な意味はありません.

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【2】楕円曲線のj-不変量

 y=ax^3+bx^2+cx+dという方程式で定まる曲線はおなじみの3次曲線ですが,yのところがy^2に変わるとワイエルシュトラスの楕円曲線:

  y^2=ax^3+bx^2+cx+d

になります.ただし,a,b,c,dは有理数で,右辺の3次式は重根をもたないものと仮定します.楕円曲線をワイエルシュトラス形式に制限しても一般

性を失いません.実際,どのような楕円曲線もワイエルシュトラス形式の楕円曲線に双有理的に同値だからです.

 また,x^2の項の係数はx’=x+b/3aと変数変換(カルダノ変換)することによって簡単に消すことができますから,

  y^2=x^3+ax+b   (4a^3+27b^2≠0)

を楕円曲線と定義しても構いません.4a^3+27b^2≠0は重根をもたないための条件です(判別式:Δ=−(4a^3+27b^2)).

 ワイエルシュトラスの標準形:

  y^2=x^3+ax+b   (2^2a^3+3^3b^2≠0)

のj-不変量を計算すると,

  j=2^8・3^3b^2/(2^2a^3+3^3b^2)

となります.jー不変量は,2つの楕円曲線が同じjー不変量をもつかどうかなど,3次曲線を分類する(見分ける)ための指標になっているのです.

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y^2=x^3+1のj-不変量は1

y^2=x^3+xのj-不変量は1728

任意の複素数jに対して、j(E)=Jとなる楕円曲線が存在する。

t=-27t/4(j-1728)とおくと

y^2=x^3+tx+tは楕円曲線で、そのj-不変量はjとなる。

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 y^2=4x^3-60g4x -140g6は楕円曲線である。

そのj関数はj不変量を計算することで

 j(z)=1728・4(15g4)^3/{4(15g4)^3-27(35g6)^2}

この関数はフーリエ展開を持ち、そのq展開は

j(z)=q^-1+744+19684q+21493760q^2+・・・,q=exp(2πiz)

不思議なことに整数係数になるのである

なお、j(i)=1728,j(ω)=0のようにきわめて超越的な関数が、整数になってしまうのである。

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ヒーグナー・スタークの定理

j(2i)=8000,j((-1+7i)/2)=-3375

j((-1+163i)/2)=-(640320)^3

αd=di (d=1,2 mod 4)

αd=(1+di)/2 (d=3 mod 4)

j(αd)が整数となることはm+nαdの世界での素因数分解の一意性が成り立つことと同値である。

d={1,2,3,7,11,19,43,67,163}

j(5i)=632000+282880√5

d=5のとき、6=2・3-(1+5i)(1-5i)という2通りの分解がある

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