■フェルマーの最終定理と有限体(その50)

【ワイエルシュトラスの楕円曲線】

 y=ax^3 +bx^2 +cx+dという方程式で定まる曲線はおなじみの3次曲線ですが,yのところがy^2 に変わるとワイエルシュトラスの楕円曲線:

  y^2 =ax^3 +bx^2 +cx+d

になります.ただし,a,b,c,dは有理数で,右辺の3次式は重根をもたないものと仮定します.楕円曲線をワイエルシュトラス形式に制限しても一般性を失いません.実際,どのような楕円曲線もワイエルシュトラス形式の楕円曲線に双有理的に同値だからです.

 x^2 の項の係数はx’=x+b/3aと変数変換することによって簡単に消すことができますから,

  y^2 =x^3 +a^x+b   (4a^3 +27b2 ≠0) を楕円曲線と定義しても構いません.4a^3 +27b^2 ≠0は重根をもたないための条件です. 特異点がなければ,楕円曲線と呼ばれる非有理曲線で2次曲線とは本質的に異なってきます.2次曲線はすべて有理曲線ですが,3次曲線が異なる3根をもつ有理係数の多項式の場合は,有理勾配の方法によるパラメトライズは有効には働きません.すなわち,楕円曲線は有理曲線でないため有理関数で表わすことはできませんが,楕円関数でパラメトライズすることは可能です.

 楕円曲線の例として,y^2 =x^3 +1をあげますが,この曲線のグラフはまったく楕円ではありません.楕円と楕円曲線はまったく異なるもので,楕円の孤の長さを求める楕円積分問題とかかわっていることから楕円曲線という名前がつけられています.

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 ワイエルシュトラスの標準形:

  y^2=x^3+ax+b   (2^2a^3+3^3b^2≠0)

のj-不変量を計算すると,

  j=2^8・3^3b^2/(2^2a^3+3^3b^2)

となります.jー不変量は,2つの楕円曲線が同じjー不変量をもつかどうかなど,3次曲線を分類する(見分ける)ための指標になっているのです.

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 最後に,オイラーによる,楕円曲線:y^2=ax^3+bx^2+cx+dの解法を紹介しましょう.

 d=f^2とする.gを未知数として,ax^3+bx^2+cx+f^2=(gx+f)^2なる関係を考える.c=2fgになるようにgを定めれば,ax+b=g^2.したがって,

  x=(g^2−b)/a=(c^2−4bf^2)/4af^2

なる有理数解を得る.

 手品のようですが,幾何学的に考えると

  F(x,y)=y^2−ax^3−bx^2−cx−f^2 の点(0,f)における接線の方程式は−cx+2f(y−f)=0.ここで,c=2fgと定めるとy=gx+fになる.曲線は3次で,接点では2重に交わるから,第3の交点(有理点)が1つ決まるのです.

  y^2=ax^4+bx^3+cx^2+dx+e では,e=f^2,d=2gf,c=g^2+2hfとおくと,ax^4+bx^3+cx^2+dx+f^2=(hx^2+gx+f)^2より,ax+b=h^2+2hg.したがって,

  x=(b−2hg)/(h^2−a) なる解が得られます.

  y^3=ax^3+bx^2+cx+d の場合も同様に解くことができますが,これらの方法は実質的にはディオファントスまでさかのぼることができます.

 

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