■フェルマーの最終定理と有限体(その42)
【5】ヤコビ和とガウス和
互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れません.
a=3k → a^2=9k^2
a=3k+1 → a^2=9k^2+6k+1
a=3k+2 → a^2=9k^2+12k+4
より,a^2を3で割ったときの余りは0か1になります.0になるのはaが3の倍数のときです.
b^2に対しても同じことが成り立ちますから,a^2+b^2を3で割ると,余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかなりません.0+0はaもbも3の倍数であることに対応していて,仮定に反します.
4n+3の数はa^2+b^2の形にならないことも簡単に示すことができます.
a=4k → a^2=0 (mod 4)
a=4k+1 → a^2=1 (mod 4)
a=4k+2 → a^2=0 (mod 4)
a=4k+3 → a^2=1 (mod 4)
したがって,a^2+b^2を4で割ったときの余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかならないので,この主張が示されました.
pを素数として,p=x^2+y^2を満たす整数x,yが存在するための必要十分条件は
p=1(mod4)またはp=2
であることは有名です.
それに較べてあまり知られていないのですが,p=x^2−xy+y^2を満たす整数x,yが存在するための必要十分条件は
p=1(mod3)またはp=3
が成り立つことです.
ヤコビ和を使うと(←)が簡単に証明できます.
(証明)p=2(mod3)であれば,x^2−xy+y^2を割った余りは2になり得ないので解なし.p=1(mod3)であれば,
J(χ)=x+yω,J(χ~)=x+yω~
と表される.
p=|J(χ)|^2=J(χ)J(χ~)
=(x+yω)(x+yω~)=x^2−xy+y^2
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ここで,一般的に話を進めるためにガウス和とヤコビ和の本来の姿を導入しますが,位数p−1の巡回群の指標には1のp乗根が対応して,
ζ=exp(2πi/p)
として
τ(χ)=Σχ(x)ζ^x (x=1~p-1)
を指標χ(x)に属するガウス和と呼びます.すなわち,ガウス和はFpに1のp乗根ζを添加した拡大体におけるχの1次結合です.
また,指標χ(x),φ(x)に対して,ヤコビ和
J(χ,φ)=Σχ(x)φ(1-x)=τ(χ)τ(φ)/τ(χφ)
が定義されます.前節の例ではφ=χとなっていたことがおわかり頂けたでしょうか.ヤコビ和は本来は2つの指標から定まるものであって,ここでは簡単に
J(χ,χ)=J(χ)
J(χ~,χ~)=J(χ~)
と書いているのです.また,これらの大きさは
|τ(χ)|=√p
|J(χ,φ)|=√p
で与えられます.
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なお,ガウス和の定義はガンマ関数
Γ(s)=∫(0,∞)x^(s-1)exp(-x)dx
ヤコビ和はベータ関数
B(p,q)=∫(0,1)x^(p-1)(1−x)^(q-1)dx=Γ(p)Γ(q)/Γ(p+q)
と非常によく似ていています.ガンマ関数とベータ関数が兄弟分にあたるように,ガウス和とヤコビ和も兄弟分というわけです.
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