■直角三角形の内接円と傍接円(その10)
【2】三角形についての公式
任意の三角形に対して
tanα+tanβ+tanγ=tanαtanβtanγ
が成り立ちます.
この式は
γ=π−(α+β)
として,tanの加法公式を用いることにより容易に証明されます.役に立つかどうかは別として,私にとってこの公式は対称性のある美しい公式と感じられるのです.もちろん,美しく感じるかどうかは主観的であり,強制すべきものではありませんが,三角形の普遍的な調和を内包しているように思えるというのがその理由です.
同様に,任意の三角形に対して
sinα+sinβ+sinγ=4cosα/2cosβ/2cosγ/2
sin2α+sin2β+sin2γ=4sinαsinβsinγ
sin3α+sin3β+sin3γ=−4cos3α/2cos3β/2cos3γ/2
cosα+cosβ+cosγ=1+4sinα/2sinβ/2sinγ/2
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等式の世界も面白いのですが,不等式の世界だって奥深いものがあります.鋭角三角形ならば,算術平均≧幾何平均より
tanα+tanβ+tanγ≧33√tanαtanβtanγ
前項より,
tanαtanβtanγ≧33√tanαtanβtanγ
したがって,
tanαtanβtanγ≧√27=3√3
ですから,
tanα+tanβ+tanγ≧3√3 (等号は正三角形のとき)
を容易に証明することができます.
少し気分を変えて,次の不等式はどうでしょうか?
(問題)
sinαsinβsinγ≦3√3/8
(証明)
2sinβsinγ=cos(β−γ)−cos(β+γ)
=cos(β−γ)+cosα
sinαsinβsinγ
=1/2sinα(cos(β−γ)+cosα)
≦1/2sinα(1+cosα)
これより極大値を計算すると,3√3/8が得られます.
なお,この不等式は三角形の外接円,内接円および面積をR,r,△とすれば,
abc=4R△,
(a+b+c)r=2△
また,正弦定理
a/sinα=b/sinβ=c/sinγ=2R
より,
abc≦3√3R^3
と同値です.
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