■シュタイナーの円鎖(その1)

アルベロスの円列の中心は楕円上にあることが知られている。(さらにアルベロスの円列の接点は別の円上にあることが知られている。)

シュタイナーが考えた見事な方法は最初に固定した2つの円を反転して、2つの同心円に変えるというものである。メビウス変換を使ってその軌跡を求めてみたい。

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【1】接円定理と反転法

 1次分数変換(メビウス変換)

  w=(az+b)/(cz+d)

は円を円に変換する.(この変換は円は円に移り,直線も円へ移るという性質を併せもつ.)

 メビウス変換

  w=f(z)=(az+b)/(cz+d)

は複素数球面上で考えると1つの回転に対応していて,たとえば,数zを

  (z−1)/(z+1)

に置き換えるには,北極と南極が赤道のところにくるように球を90°回転させればよい(0を−1に,1を0に,∞を1に移す座標変換).この写像は等角写像になる.

 また,[0,i,−i]を[1,−1,0]に移す変換は

  w=−(z+i)/(3z−i)

となるが,少しだけ補足しておきたい.

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【2】シュタイナーの定理におけるメビウス変換

 シュタイナーの定理は最初の2円が同心円になるような反転を考えると容易に証明できる.

  1=(a+b)/(c+d)

  −1=(−a+b)/(−c+d)

  α=b/d

を解くと

  w=(z+α)/(αz+1)

は半径1の円板をそれ自身に移し,[−1,0,1]はそれぞれ[−1,α,1]に移されることがわかる.(円板の中心が円板の中心に移されるわけではない).

 メビウス変換

  w=(z+α)/(αz+1)

の逆変換は

  z=(−w+α)/(αw−1)

であるが,一般には

  w=(az+b)/(cz+d)

の逆変換は

  z=(dw−b)/(−cw+a)

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【3】シュタイナーの円

 シュタイナーは反転法によって,鎖の間の連結する小円の半径やはじめの2つの円の中心間距離などの条件を求めた.

 メビウス変換

  w=(z+a)/(az+1)

したがって,w=0に写されるのはz=−a.z→∞に対する極限は1/a.z→−1/aに対する極限は∞.すなわち,z=−aは0に写り,z=−1/aは∞に写る.ゆえに,w平面の原点を通る直線はz=−aとz=−1/aを通る円の像である(−1<a<0).

 円の中心は,x=−(a+1/a)/2上にあるから,

  (x+(a+1/a)/2)^2+(y−y0)^2={(a−1/a)/2}^2+y0^2

 また,その逆変換は

  z=(−w+a)/(aw−1)

であるから,z=0に写されるのはw=aである.w→∞に対する極限は−1/a.w→1/aに対する極限は∞.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 他方,原点を中心とする同心円|w|=kは

  |(z+a)/(az+1)|=k

で定義される円の像である.これはz=−aとz=−1/aの2点を極限点とするアポロニウスの円である.つまり,z=−aとz=−1/aの2点からの距離の比が一定な点の軌跡である.

  |(z+a)/(az+1)|=|(z+a)|/|(az+1)|=|(z+a)|/|a||(z+1/a)|=k

より,2点

  (−a,0),(−1/a,0)

からの距離の比が|a|k:1のアポロニウスの円となる.

  (x+a)^2+y^2:(x+1/a)^2+y^2=a^2k^2:1

  (x−a(1−k^2)/(1−a^2k^2))^2+y^2={k^2(1−a^2k^2)+a^2(1−k^2)^2}/(1−a^2k^2)^2

 こうして,w=0を通る直線は(y軸に平行な直線上に中心をもつ)z=−a,z=−1/aを通る円に,|w|=kはその円に直交する円となる.このような円の族が作る図形を2点−aと−1/aで決まるシュタイナーの円という.

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