■チェバと円定理(その10)
まず最初に,n個の円が接するあるいは交わる一連の定理(接円定理,交円定理)を紹介するところから始めることにしよう.
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[1]もうひとつの4円定理・・・傍斜術
コラム「和算と算額」で紹介したデカルトの円定理は,互いに接する4個の円の半径の逆数の間の等式であったが,和算ではもうひとつの4円定理・・・傍斜術も得られていた.傍斜術は和算における円の接触問題では大事な定理であったとのことである.
まず,ひとつの円O(d)を描き,その周りに3個の円O(a),O(b),O(c)を外接させる.この4円は連結しているが、デカルトの円定理のように互いに接しているわけではない.このとき,接していないO(a)とO(c)の外共通接線(傍斜)の長さは
2{(bcd(a+b+d))^(1/2)+(abd(c+b+d))^(1/2)}/(b+d)
で与えられる.
また,三円傍斜術では,まずひとつの円O(a)を描き,その周りに2円O(b),O(c)を外接させる.この3円は連結している必要はない.O(a)とO(b)の接点PとO(a)とO(c)の接点Q,O(b)とO(c)の外共通接線(傍斜)の長さをdとすると,このとき
PQ=ad/((a+b)(a+c))^(1/2)
で与えられる.
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[2]5円定理
あるひとつの円周C上に中心をもつ5つの円を5円のそれぞれが隣の円とC上に交点をもつようにして描く.5つの円は同じ大きさである必要はない.このとき,もう一つの交点を結ぶと星形五角形となり,その頂点は5つの円周上にある.
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[3]6円定理
まず三角形ABCの2辺b,cに接する第1円を描く.次に第1円とc,aに接する第2円を描く.さらに第2円とa,bに接する第3円を描く.さらに第3円とb,cに接する第4円を描く.さらに第4円とc,aに接する第5円を描く.さらに第5円とa,bに接する第6円を描く.
このとき,第6円は第1円に接し,円鎖は完結する.つまり第7円が第1円に一致するというわけである.
三角形ビリヤードの場合,球があたる壁を中心として鏡像を貼り付けていくと,6個目の鏡像で最初の三角形を平行移動させたものが登場する.このことは任意の位置から特定の角度でビリヤードの球を発射させると6回壁にあたった後,最初と同じ位置・同じ角度で戻ってくることができることを意味している.6円定理もきっとこのことと関係して,円よりは三角形の性質の表れと思われる.
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[4]7円定理
まず,ひとつの円を描きその周りに6個の円を並べる.それら6つの円はどんな大きさでもよい(直線でもよい)が両隣の円および最初の円に接するようにする.
このように6個の連結した円の鎖がひとつの円に外接しているとき,6つの円が最初の円に接している接点のうち,相対する点同士を結ぶ3本の直線は1点で交わる.
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