■ランダウの第3問題(その7)
昨日,秋山仁先生より
フバータル「ポール・エルデス・離散数学の魅力」近代科学社
を謹呈していただいたので,概要を紹介したい.
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【2】エルデシュによる初等的証明
チェビシェフは,漸近評価
c1x/logx<π(x)<c2x/logx
を得るために,オイラーによって1740年に考案されたゼータ関数(のちにリーマンがこの名前を付けた)やガンマ関数を利用しましたが,ベルトランの仮説に対しては,ずっと簡単な証明がラマヌジャンやエルデシュ(1932年,19歳)によって与えられています.
この結果を得るのには非常に巧みな組み合わせ的推論が用いられているのですが,エルデシュはまず二項係数の中央の値
cn=2nCn=(2n)!/(n!)^2
を考えます.
これは整数であり,素因数分解するとnより大きく2n以下の素数があれば,それらはすべて1乗の形の積として現れます.もしもその間に素数がなければ,n以下の素数の積で表されるはずです(実はさらに2n/3以下の素数の積なります.2n/3より大きくn以下の素数は分子に2回,分母に2回現れて約分される).
nまでの素数全体の積は大体e^nくらいというのが素数定理のひとつの表現なのですが,もっと粗く4^nというのなら数学的帰納法で容易に証明できます.nと2nの間に素数がないならおおざっぱにいって
cn≦4^(2n/3)
ですが,これはcn〜4^nという事実に反します.
以下は割愛しますが,証明の一部は不等式
2^2n/(2n+1)≦2nCn≦2^2n
に基づいています.上界はΣ2nCk=2^2nより明らか,下界は2n+1個の二項係数の中で2nCnが最大であり,平均が2^2n/(2n+1)であることから証明されます.この評価は簡単ではありますが,かなり正確です.
4^n/2≦2nCn≦4^n
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[補]2nCnについては,さらに正確な評価を与える
2^2n/(2√n)≦2nCn≦2^2n/√2n
などの評価式もしばしば使われます.また,スターリングの公式を使うとより精密な結果
2nCn〜2^(2n)/√(πn)
が得られますが,この評価は数論,素数定理などとも関係しています.
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