■素数の無限性(その41)

[5] {an+b},(a,b)=1なる無限等差数列の中には素数が無限に存在する(ディリクレ、1837年)

予想:2^n-1型素数は無限に存在する(メルセンヌ)

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[Q]4n+3型奇数の中に素数が無限にあることを証明せよ.

 4n+3型素数を小さい方から順にp1=3,p2=7,・・・,pn(最大の4n+3型素数)とする.

  q=4(p1p2・・pn)+3

が素数であるとするとpnより大きな素数が存在することになり矛盾.

 合成数であるとするとpkで割り切れないので,4n+1型素数では割り切れるはずである.もし,qのすべての約数が4n+1型だけならば,その積であるqは4n+1型になるが,qは4n+3型なので再び矛盾.(4n+3型約数は少なくともひとつは存在する.

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[Q]4n+1型奇数の中に素数が無限にあることを証明せよ.

 4n+1型素数を小さい方から順にp1=5,p2=13,・・・,pn(最大の4n+1型素数)とする.

  q=4(p1p2・・pn)+1

が素数であるとするとpnより大きな素数が存在することになり矛盾.

 合成数であるとするとpkで割り切れないので,4n+3型素数では割り切れるはずである.もし,qのすべての約数が4n+3型だけならば,その積であるqは4n+3型になるとは限らない.

 たとえば,

  q=(4m+3)(4n+3)=12mn+12m+12n+9

   =4(3、m+3m+3n+2)+1

となり,この証明はうまくいかない.

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[Q]ディリクレの算術級数定理(1837年)

  数列{a+nd},aとodは互いの素

のなかに素数は無限に存在する.

 そして,有名な素数定理(PT)は,漸近分布の形で

  π(x)〜x/logx

と表すことができます.素数は無限個存在し,そして等差数列{a+kn}にも素数は無限に含まれるのですが,素数pでa+knの形のものの分布問題がディリクレの算術級数定理です.

  π(x;a,n)〜C・x/logx   C=1/φ(n)

 算術級数定理は素数定理を精密化したもので,初項aの取り方にはよらないのですが,ここで,オイラーの関数φ(n)は1からn−1までの整数のうち,nと互いに素になるものの個数

  φ(n)=#(Z/nZ)

として定義されます.たとえば,n=7の場合,1,2,3,4,5,6なのでφ(7)=6,n=10の場合1,3,7,9がそうなのでφ(10)=4となります.

 1760年頃,オイラーは,数nが素因数p,q,r,・・・をもつときに,それらの重複度にかかわらず,

  φ(n)=n(1−1/p)(1−1/q)(1−1/r)・・・

であることを示しました.この原理は「エラトステネスのふるい」によっているのですが,たとえば,10=2・5,44=2^2・11,100=2^2・5^2より,

  φ(10)=10(1−1/2)(1−1/5)=4

  φ(44)=44(1−1/2)(1−1/11)=20

  φ(100)=100(1−1/2)(1−1/5)=40

また,任意の素数pに対して,

  φ(p^n)=p^n(1−1/p)

したがって,

  φ(p)=p(1−1/p)=p−1

となります.

 なお,算術級数定理の証明にはディリクレのL関数

  L(s,χ)=Π(1−χ(p)p^(-s))^(-1)

    χは乗法群(Z/nZ)の1次元表現

が用いられます.

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