■素数の無限性(その5)

[4]素数定理(アダマール、プーサン・1896年)

  #P(N)=(1+o(1))・N/logN

予想#P(N)=∫(2,∞)dt/logt+O(√x・logx)はリーマン予想と同値である(コッホ)

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 さらに,素数定理にはもっとうまい近似法があります.素数の密度関数はπ(x)/xですから,

  π(x)/x〜1/logx   (x→∞)

です.1/logxが1からxまでの平均的な素数の密度と考えられますが,これをxの近くの素数の密度と考え,区間[1,x]を小区間に区切って積分してみます.

  Li(x)=∫(2,x)dt/logt

Li(x)は対数積分関数と呼ばれます.大きい整数は素数でありにくく,小さいものほど素数でありやすいでしょうから,π(x)をx/logxで近似するより,対数積分を用いたLi(x)の近似はさらに適切な素数分布の近似式になっています.

 部分積分により

  ∫(2,x)dt/logt=x/logx+1!x/(logx)^2+・・・+(m−1)!x/(logx)^m+・・・

より,

  Li(x)〜x/logx

ですから

  π(x)〜Li(x)

が得られます.また,

  (x/logx)’=1/logx−1/(logx)^2

から簡単にわかるように

  π(x)=Li(x)+O(x/logx)

とも書くことができます.

 素数定理はπ(x)の初項だけを求めた定理であるといえるのですが,自然な流れとして,π(x)の第2項は何かという問題がおこってきます.誤差項

  O(x/logx)

において,x→∞のとき,logxはxに較べて十分小さいのでこれを無視して「ほぼxの1乗に等しい」と考えることができます.

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 素数定理は,ガウス以降,多くの数学者たちが証明できなかった難問でしたが,ガウスの予想から約100年後の1896年,フランスの数学者アダマールとプーサンは,同じ年に独立に,リーマンによって複素数まで拡張されたゼータ関数を用いてガウスの素数定理を証明しました.

 彼らが素数定理を証明したとき,実際に示したのは

  π(x)=Li(x)+O(xexp(−c(logx)^(1/2)))

が成り立つということでした.誤差項のlogxは無視できるので,xの1乗に等しいということになります.

 この誤差項はゼータ関数の零点の非存在に依存していて,x^eと表されるとすると,ゼータ関数の零点の実部の最大値に等しくなることがわかっています.したがって,もしリーマン予想「リーマンのゼータ関数ζ(s)の実部が0と1の間にあり,零点の実部はすべて1/2である(1859年)」が正しければ,この近似を

  π(x)=Li(x)+O(x^(1/2)logx)

のようにもっとよくすることができるのです(フォン・コッホ,1901年).

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