■素数の無限性(その4)
[6] (n,2n]を満たす素数が必ず存在する(チェビシェフ、1852年)
予想:(n^2,(n+1)^2]を満たす素数が必ず存在する(ルジャンドル)
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1850年に,ロシアの数学者チェビシェフは,ベルトランの仮説と呼ばれる命題:任意の数nと2nの間には少なくとも一つの素数pが存在する(n<p≦2n),あるいは同じことですが,素数pの次の素数は2pより小さい(pk+1 <2pk )という定理を証明しました.
この証明は彼が実に18才のときだったそうですから,「栴檀は双葉よりの芳し」の諺のごとくです.チェビシェフの定理によって,素数の分布には何らかの秩序が存在していることになります.(なお,ベルトランの仮説に対しては,ずっと簡単な証明がラマヌジャンやエルデシュ(1932年,19歳)によって与えられています.)
さらに,チェビシェフは1852年に,十分大きなxについてπ(x)/(x/logx)がc1=0.92129とc2=1.10555の間にあるという結果を得ています.
c1x/logx<π(x)<c2x/logx
この漸近評価を得るためにチェビシェフは,オイラーによって1740年に考案されたゼータ関数(のちにリーマンがこの名前を付けた)を利用しました.また,この結果を得るのには非常に巧みな組み合わせ的推論が用いられているのですが,漸近評価の一部は不等式
2^2n/(2n+1)≦2nCn≦2^2n
に基づいています.上界はΣ2nCk=2^2nより明らか,下界は2n+1個の二項係数の中で2nCnが最大であり,平均が2^2n/(2n+1)であることから証明されます.この評価は簡単ではありますが,かなり正確です.
2nCnについては,さらに正確な評価を与える
2^2n/(2√n)≦2nCn≦2^2n/√2n
などの評価式もしばしば使われます.また,スターリングの公式を使うとより精密な結果
2nCn〜2^(2n)/√(πn)
が得られますが,この評価は数論,素数定理などとも関係しています.
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