■素数の分解(その52)
【3】ガウスの整数環(1)
ガウスの整数
Z[i]={m+ni|m,nは整数}
には,±1,±iの4個の単数があります.ガウス整数は正方形の対称性をもつ正方格子をなします.単数を除いて,素因数分解の一意性が成立します.4k+3型素数はZにおいても素数ですがが,2と4k+1型の素数はZで因数分解できます.
2=(1+i)(1−i)=i(1−i)^2
5=(2+i)(2−i)
13=(2+3i)(2−3i)
17=(4+i)(4−i)
29=(5+2i)(5−2i)
===================================
【4】ガウスの整数環(2)
ガウスの素数とは,ノルムm^2+n^2が1よりも大きいガウスの整数Z[i]のなかで,そのノルムよりも小さいノルムをもつガウスの整数の積として表されないものです.逆にいうと,ガウスの整数は必ずガウスの素数によって因数分解されます.ガウスの素数による因数分解では・・・
[1]最小の例は2=(1+i)(1−i)である.
|1+i|^2=2,|1−i|^2=2,|2|^2=4
[2]2個の平方数の和として表される通常の4N+1型素数は2個のガウス素数の積である.
37=(6+i)(6−i)
|6+i|^2=37,|6−i|^2=37,|37|^2=37^2
[3]通常の素因数からガウスの素因数を見つけることができる.
|3+i|^2=10=2・5
ノルムが2のガウス素数は(1+i),(1−i)
ノルムが5のガウス素数は(2+i),(2−i)→なせなら和が5になる平方数の組み合わせは4と1の組み合わせに限られる.
3+i=(1+i)(2−i)
===================================
【5】ガウスの整数環(3)
通常の整数の除法では
a=qb+r,|r|<|b|
とすることができますが,ガウスの整数に対しても同様のことを考えてみます.
a=5+3i,|a|^2=34
b=3+i,|b|^2=10
5+3i=(3+i)q+r,|r|^2<10
r=5+3i−(3+i)q=(5−3q)+(3−q)i
(5−3q)^2+(3−q)^2<10
10q^2−36q+34<10
q=2のとき40−72+34=2<10
とするのではqを通常の整数とみなしているが,qもガウスの整数であるので,NG.
(3+i)をひとつの格子点とし,辺の長さ|3+i|の正方格子点
0,3+i,2(3+i),・・・
i(3+i),(1+i)(3+i),(2+i)(3+i)
から5+3iに最も近い格子点を選ばなければならない.それは2(3+i)であって,|r|<|b|が成り立つ.
===================================
【6】クラインの整数環
ガウス整数とアイゼンスタイン整数はユークリッド整域であることがわかりましたが,それに続いて最も簡単な整数環はクラインの整数環
Z(λ)={a+bλ|a,bは整数},λ=(−1+√−7)/2
です.クライン整数は2つの単数±1のみをもち,菱形格子をなします.クライン環では2が素因数分解されます.
2=(−1+√−7)/2・(−1−√−7)/2
===================================