■素数の分解(その51)
【2】ユークリッドの互除法
ユークリッド整域とは,ある数体系内で,除法
α=β・γ+δ,|δ|<|β|
は可能かという問題です.複素数版のユークリッドの互除法でも割り算の余りδが|δ|<|β|として表現されれば,アルゴリズムが定義できます.ここでは,Z(√−d)整数の体系内で,除法
α=β・γ+δ,|δ|<|β|
は可能かというユークリッド整域の問題を考えてみます.
Q(√−d)の部分集合Z(√−d)は
Z(√−d)={a+b√−d|a,bは整数}
で定義されます.Z(√−d)は複素平面内で幅1×高さ√dの直交格子を形成しますから,β^-1αに最も近いZ(√−d)の整数γが1未満にあるためには,
l^2=(√d/2)^2+(1/2)^2
d=1のとき,√2/2<1(ユークリッド整域)ガウス整数環
d=2のとき,√3/2<1(ユークリッド整域)
d≧3のときユークリッド整域でないことが幾何学的に証明されます.
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Z(√−3)はユークリッド整域ではありませんが,それではZ((−1+√−d)/2)はどうでしょうか? これは複素平面内で斜交格子を形成し,その菱形の4頂点は
(0,√−d,(1+√−d)/2,(−1+√−d)/2)
β^-1αに最も近いZ(√−d)の整数γが1未満にあるためには,
l^2=(√d/2−l)^2+(1/2)^2
−l√d+(d+1)/4=0
l=(d+1)/4√d
d=3のとき,1/√3<1(ユークリッド整域)アイゼンシュタイン整数環
d=7のとき,2/√7<1(ユークリッド整域)
d=11のとき,3/√11<1(ユークリッド整域)
以上より,Z(√−d)の整数環がユークリッド整域となるのは,
d=1,2,3,7,11
の5つの場合に限ります.ユークリッド整域→一意性整域が成り立つは真ですが,逆は成り立ちません.一意分解性をもつが,ユークリッド整域ではないもの(単項イデアル整域)は,
d=19,43,67,163
に対応するものです.
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