■素数の分解(その48)

ラマヌジャンの数

  1729=12^3+1^3=10^3+9^3=7・13・19

は面白いが意外と厄介な数のようです.完全擬素数(カーマイケル数)でもあります.

[Q]x^3+y^3=1729を満たす整数解(x,y)をすべて求めよ.

を整数論の立場から再考してみます.

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【1】アイゼンシュタインの整数環(1)

アイゼンスタインの整数

Z[ω]={m+nω|m,nは整数},ω=(−1+√−3)/2

には,6つの単数

  ±1,±ω,±ω^2

があり,正六角形の対称性をもつ三角格子をなします.単数を除いて,素因数分解の一意性が成立します.

2と6k+5型素数はZ[ω]においても素数ですが,3と6k+1型の素数はZで因数分解できます.

  3=(1−ω)(1−ω^2)=(1+ω)(1−ω)^2=(1−ω)(2+ω)

  7=(2−ω)(2−ω^2)

  13=(3−ω)(3−ω^2)

  19=(3−2ω)(3−2ω^2)

37=(4−3ω)(4−3ω^2)=(4−3ω)(7+3ω)

  1729=7・13・19

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【2】アイゼンシュタインの整数環(2)

[1]3次以上の多項式(不定方程式)には一般的な公式がなく,むしろ偶然の関係がものをいうようです.x^3+y^3については虚3乗根ωを使って,

  x^3+y^3=(x+y)(x+ωy)(x+ω^2y)

と因数分解できます.

[2]ところが,7,13,19はいずれもアイゼンシュタインの整数Z[ω]の体系の中では素数ではなく,

  7=(3+ω)(3+ω^2)

  13=(4+ω)(4+ω^2)

  17=(5+2ω)(5+2ω^2)

などと素因数分解されます.

[3]この組み合わせが多数生じるので,簡単にx,yを定める方程式を書き下せません(もちろん組み合わせは有限個ですから,全部の可能性を根気強く調べれば解を得ることは可能です).

[4]この場合は偶然,

  7・13=91=4^3+3^3

  7・19=133=5^3+2^3

  13・19=247は正の整数の3乗の和にならない

といった関係もありますし,結果的に

  (12+ω)(12+ω^2)=133=7・19

  (10+9ω)(10+9ω^2)=91=7・13

が成立しています.そして(±ω,±ω^2など単数を調整する必要がありますが)

  12+1=13

  12+ω=(5+2ω)(3+ω^2)

  12+ω^2=(5+2ω^2)(3+ω)→x=12,y=1

  10+9=19

  10+9ω=(−ω^2)(4+ω)(3+ω^2)

  10+9ω^2=(−ω)(4+ω^2)(3+ω)→x=12,y=1

  12+ω^2=(5+2ω^2)(3+ω)→x=12,y=1

が得られます.

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