■リー群と表現(その130)
【1】ディンキン図形
(その320)では,平面を鏡映三角形で埋めつくすというユークリッド幾何学の問題を考えましたが,ルート系はn次元ユークリッド空間のベクトルの集合なので,それを平面上に図示するためには特別な工夫が必要となります.
1次独立な2つのルートα,βのなす角をθとすると,
(α,β)=|α||β|cosθ
ただし,(α,β)>0,|α|≦|β|,0<θ≦π/2としても一般性を失いません.
また,
2(α,β)/(α,α)=〈α,β〉
と略記すると,
〈β,α〉=2|β|/|α|cosθ
が成立しますから,
〈α,β〉〈β,α〉=4cos^2θ
が得られます.
ここで,ルート系の定義から,〈α,β〉は整数ですから,
4cos^2θ=0,1,2,3
したがって,
θ=π/2,π/3,π/4,π/6
に限られます.
そのとき,n次元単体の基底となるn個のベクトルの集合を
Φ={α1,α2,・・・,αn}
として,
〈αi,αj〉=2(αi,αj)/(αj,αj)=Cij
で与えられる整数をカルタン数,n次正方行列C={Cij}をカルタン行列といいます.これはαjを長さ√2のベクトルとするとき,カルタン行列は内積(αi,αj)からなるグラミアンとして定義されることを意味しています.
θ |β|/|α| 〈α,β〉 〈β,α〉 〈α,β〉〈β,α〉
π/2 − 0 0 0
π/3 1 1 1 1
π/4 2 1 2 2
π/6 3 1 3 3
カルタン行列ではこの4つの場合の値のみが許されます.カタラン数はそれほど多くの値をとるわけではないので,その状況を端的に表すグラフ(ディンキン図形)を考えることができます.そして,〈α,β〉〈β,α〉,すなわち,
θ=π/2・・・・結ばない
θ=π/3・・・・辺−で結ぶ(・−・)
θ=π/4・・・・辺=で結ぶ(・=・)
θ=π/6・・・・辺≡で結ぶ(・≡・)
と定めます.
===================================