■リー群と表現(その33)

【3】SO(3)の回転行列

 

 n次直交群O(n)のなかで行列式が1のものがn次特殊直交群SO(n)です.SO(2)は

  [cosθ,−sinθ]

  [sinθ, cosθ]

すなわち,平面の原点を中心とする回転のなす群です.2次元の直交変換はそのまま平面の回転なので,平面の回転では回転行列R

  R=[cosθ,-sinθ]

   [sinθ, cosθ]

をかけてやればよいのですが,3次元の直交変換は一般に空間の回転になりません.

 

 空間を回転させる行列で直交変換となっているもの,すなわち,パラメータ数が3つの「回転」かつ「直交」行列として

  (1)オイラー角に基づくもの

  (2)ロール・ピッチ・ヨーに基づくもの

があります.

 

 (1)はz軸まわりの回転α→新しいy軸まわりの回転β→新しいz軸まわりの回転γ,(2)はz軸まわりの回転φ→新しいy軸まわりの回転θ→新しいx軸まわりの回転ψの3段階によって表すもので,3番目の回転軸が異なるだけで両者に本質的な違いはありません.ここでは(2)を示しますが,

 

  Rψ=[1,0,0]

     [0,cosψ,−sinψ]

     [0,sinψ,cosψ]

 

  Rθ=[cosθ,0,−sinθ]

     [0,1,0]

     [sinθ,0,cosθ]

 

  Rφ=[cosφ,−sinφ,0]

     [sinφ,cosφ,0]

     [0,0,1]

の合成マトリックス:R=RφRθRψは

  R(1,1)=cosφcosθ

  R(2,1)=sinφcosθ

  R(3,1)=-sinθ

 

  R(1,2)=cosφsinθsinψ-sinφcosψ

  R(2,2)=sinφsinθsinψ+cosφcosψ

  R(3,2)=cosθsinψ

 

  R(1,3)=cosφsinθcosψ+sinφsinψ

  R(2,3)=sinφsinθcosψ-cosφsinψ

  R(3,3)=cosθcosψ

のようになります.

 

  R=[cosθ,-sinθ]

   [sinθ, cosθ]

を一般化したものですが,非常に面倒な表現になってしまいました.

 

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 2次元の回転群は

  x’=xcosθ−ysinθ

  y’=xsinθ+ycosθ

と表されるのですが,ところで,2次元回転群のもう一つの表現として,

  R=exp(iθ)

として

  Z’=RZ

の形に書くことができます.

 

 3次元の回転についてもこのように簡単な表現はないものでしょうか? そこで,これからしばらくの間,無限小生成子と呼ばれる方法を紹介したいと思います.

 

  R=[cosθ,-sinθ]

   [sinθ, cosθ]

行列のθに関する微分をとり,θ=0とおきます.

  Lz=1/i[dR/dθ](θ=0)

を求めると,

  Lz =[0,i]=−σy

      [−i,0]

が得られます.物理学者はこの行列をしばしば無限小生成子と呼びます.無限小回転を表す行列という意味なのですが,数学的には直交群の単位行列Eにおける接ベクトルとして与えられるものです.

 

 3次元の回転群についても同様の方法を適用し,微分により無限小生成子を求めると(ψ,θ,φ)角に対応した3つの無限小生成子

  Lψ=[0,i,0] Lθ=[0,0,i] Lφ=[0,0,0]

     [−i,0,0]   [0,0,0]    [0,0,i]

     [0,0,0]    [−i,0,0]   [0,−i,0]

が得られます.

 

 これにより

  R(ψ,θ,φ)=exp{i(ψLψ+θLθ+φLφ)}

   [Lψ,Lθ]=iLφ

   [Lθ,Lφ]=iLψ

   [Lφ,Lψ]=iLθ

のように書けることになります.

 

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