■リー群と表現(その28)
[補]高次元の正多面体群
まず,3次元空間の回転群の有限部分群は,コーシーが示したように
(1)巡回群Cn
(2)正二面体群D2n
(3)正多面体群,すなわち
a)正四面体群(4次交代群:A4)
b)正八面体群(4次対称群:S4)
c)正二十面体群(5次交代群:A5)
に限られる.
そしてこのことは超幾何関数が代数関数になったり,初等関数になったり,特殊関数になったりを決定する条件と関係している.なぜならば,1次分数変換は複素数球面上で考えると1つの回転に対応していて,たとえば,数xを
(x−1)/(x+1)
に置き換えるには,北極と南極が赤道のところにくるように球を90°回転させればよい.
そして,写像関数が1価となるためには,有限な回転群である場合を調べれはよいことになるが,球面上の運動の有限群は5つの回転群(巡回群,正2面体群,正4面体群,正8面体群,正20面体群)=広義の正多面体群に限ることが知られているというわけである.このように回転群の話がまったく別の方面から現れることになにか「数学の神秘」を感じないだろうか.
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正多面体は3,4,5次元以上でそれぞれ5種,6種,3種存在するが,双対正多面体や自己同型があるので,正多面体群としては3次元のときは3種,4次元のときは正5胞体群,正16胞体群,正24胞体群,正600胞体群の4種,5次元以上では正単体群と超立方体群の2種である.
星形正多面体は,n=3のとき4種あり,3次元の9種の正多面体(凸型5種+星形4種)を,
(1)三角四角型(S4,A4):3種
(2)五角型(A5):6種
と分類することもできるだろう.なお,星形正多面体はn=4のとき10種あるが,n≧5では存在しない.
高次元の正多面体群について,コクセターはn次元ユークリッド空間の反転によって生成される群の研究を進め,コクセター群とよばれる一連の群について詳しく研究した.詳細については
一松信「高次元の正多面体」日本評論社
をご覧頂きたいのであるが,n次元ユークリッド空間の変換群で,その基本領域が単体(正多胞体の基本単体)になるものの決定である.
正多面体群とリー群との関連では,n次元の正単体群はAn,超立方体群はBnまたはCn,3次元の正二十面体群はG3,4次元の正24胞体群はF4,4次元の正600胞体群はG4と関連している.
1≡2−3 (G3) 1≡2−3−4 (G4)
ここで,G3,G4はG2に1個または2個の節点をつないだグラフであり,単純リー群では許されない形である(拡張されたディンキン図形).また,例外群はDn,E6,E7,E8のいずれかの形になることが示されている.
ユークリッド空間の有限群(正多面体)または無限離散群(空間充填形)になるのは,4つの無限系列(An,Bn,Cn,Dn)と6つの例外的な場合(G3,F4,G4,E6,E7,E8)に限るのである.
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