■リー群と表現(その25)
【2】ルート系
(問)1つの3角形を辺に関して次々折り返していって,3角形が互いに重なることなく,平面を埋めつくすことができるか?
(答)この問題は平面を鏡映三角形で埋めるというものですが,1つの頂点に会する三角形は偶数に限る必要はありません.
頂点の角度をαとおくと,頂点を一回りしたので,
α=2π/p ただし,pは3以上の自然数.
まったく,同様に残り2つの内角に対しても
β=2π/q,γ=2π/r
また,α+β+γ=πより
1/p+1/q+1/r=1/2
が成り立ちます.
ここで,3≦p≦q≦rと仮定すると
1/2=1/p+1/q+1/r≦3/p
より,3≦p≦6
さらに,pが奇数のとき,頂点Aからでる2辺の長さは等しくならなければなりません.そうしないと折り返しでうまく重ならないからです.したがって,
(i)p=3のとき,q=rなので,
q(q−12)=0
これより,(p,q,r)=(3,12,12)
(ii)p=4のとき,(q−4)(r−4)=16
これより,(p,q,r)=(4,5,20),(4,6,12),(4,8,8)ですが,(p,q,r)=(4,5,20)は必要条件を満たすものの,十分条件を満たさない,すなわち,1点のまわりだけは完全に埋められても平面のタイル張りになりません.凸な多角形では七角以上になるとどんな型のものも平面充填はうまくいかないのです.
(iii)p=5のとき,q=rより,
q(3q−20)=0
これを満たす3以上の整数はありません.
(iv)p=6のとき,(q−3)(r−3)=9
これより,(p,q,r)=(6,6,6)
結局,求めるタイル張りは
(6,6,6) → 正三角形
(4,8,8) → 直角二等辺三角形
(4,6,12) → 30°,60°,90°の三角形
(3,12,12)→ 30°,30°,120°の三角形
の4通りあることになり,実際に十分条件を満たします.
30°,60°,90°のモザイクは,30°,30°,120°の三角形からなるモザイクをさらに2個の直角三角形に分解してできる模様,直角二等辺三角形モザイクは正方格子(4,4)を4分割したもの,正三角形は正三角形格子(3,6)そのものです.
30°,30°,120°の角をもつ三角形は,正三角形格子(3,6)の各面を3個の合同な三角形に分解することによってできるモザイク模様です.「麻の葉」文様と呼ばれるくり返し文様なのですが,日本では古くから装飾工芸品や寄木細工のデザインなどとして用いられていますから,ご存じの方も多いと思います.
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ここでは,平面を鏡映三角形で埋めつくすというユークリッド幾何学の問題を考えましたが,これを一般の次元に拡張して,R^nの単体に置き換えて得られるベクトルの集合が一般の階数のルート系となります.
n次元空間において高度の対称性をもったベクトルの集合がルート系なのですが,ルート系ではベクトルの間の角度は30°,45°,60°,90°またはその補角に限られるので,2次元の可能なルート系は
A2(正六角形:正三角形格子)
B2=C2(正方形)
G2(星形六角形:正6角形を2個合わせたもの)
しかありません.→[補]
正三角形モザイクからは正六角形が得られるのでA2,直角二等辺三角形モザイクは正方形の頂点と各辺の中点を結んでできるのでB2=C2,麻の葉文様はダビデの星形六角形の各頂点になっているのでG2に相当します.
sl(n,C)の1組(2個)の正規直交基底を決め,n^2−n個のルートを図示すると,sl(3,C)では2次元ユークリッド空間で正6角形が得られます.このことを高次元に拡張してみましょう.
sl(4,C)の1組の正規直交基底を決め,3次元ユークリッド空間で図示すると12個の中心対称な点を得ることができるのですが,これらを頂点とする立体は立方八面体と呼ばれる準正多面体となります.立方八面体は立方体(あるいは正八面体)の各辺の中点を結んでできる6個の正方形面と8個の正三角形面からなる14面体です.
o(2n+1,C)で同様のことを行うと2n^2個のルートは,o(5,C)のR^2の8点の場合,正方形の4個の頂点と各辺の中点4個,o(7,C)のR^2の18点の場合,立方八面体の12個の頂点と6個の正方形面の中心の点となります.
o(2n,C)には2n^2−2n個のルートがあるのですが,o(4,C)のR^2の4点は正方形の4個の頂点,o(6,C)R^2の12点は立方八面体の12個の頂点であって,sl(4,C)のルート系と同型となります.
また,sp(n,C)のルート系は2n^2個の元の集まりであって,sp(2,C)の8点はo(5,C)と同型,sp(3,C)の18点は正八面体の6個の頂点と12本の辺の中点となります.
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