■ベルヌーイ数(その2)
リーマン・ゼータ関数の偶数における特殊値は
ζ(2n)=2^(2n-1)π^2nBn/(2n)!
となる.ここでBnはn番目のベルヌーイ数を指していて,ベルヌーイ数の最初のいくつかを書くと,
B1=1/6
B2=1/30
B3=1/42
B4=1/30
B5=5/66
B6=691/2730
B7=7/6
B8=3617/510
である.
ここで,Bn/nの分子を求めてみると
n Bn/nの分子
1 1
2 1
3 1
4 1
5 1
6 691
7 1
となる.B5,B7のは1となったのに対して,B6の分子は691となり,6で割り切れないことに注目してほしい.
これ以降,分子は急激に大きくなって
n Bn/nの分子
8 3617
9 43867
10 174611
11 77683
12 236364091
したがって,691だけが残された形になる.
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【1】クンマーの定理
フェルマーの問題『x^n+y^n=z^nでn≧3のとき,x,y,zは正の整数解をもたない.』は,n=1のときにはx+y=zという単なる足し算ですから,xとyにどんな自然数を入れても自然数zは必ず存在します.n=2の場合はピタゴラス方程式:x^2+y^2=z^2ですから,解は無限にあることがわかります.n=4の場合は,フェルマー自身が無限降下法という一種の背理法を用いて0と1の中間に整数が存在するという矛盾を導き出すことによって証明が与えられました.
指数が3以上のフェルマー方程式については,n=3の場合はオイラー(1770年),n=5の場合はディリクレとルジャンドル(1825年),n=7の場合はラメ(1839年)によって証明が与えられ,それ以上のnについては素数の場合だけを調べればよいのですが,初等的な方法では手続きが急速に複雑になって行き詰まりこれ以上進むことに限界がありました.
個々のnに対して攻略する時代はこれで終わり,あとは一般的なnに対する攻略の道筋にまったく新しい方向性と理論を見いだす必要があったのですが,最大のブレークスルーは1851年,クンマーによってなされました.
クンマーは円分体の整数論の研究に専念し,
(1)2≦k≦p−3なるすべての偶数kについて,有理数ζ(k)/π^kの分子がpで割れない
(2)円分体Q(ζp)の類数(イデアル類群の元の個数)がpで割れない
は同値で,
(3)Q(ζp)の類数がpで割れなければ,x^p+y^p=z^pを満たす自然数x,y,zは存在しない
ことを示したのです.
正則素数pはBp-3 までのベルヌーイ数Bk の分子を割り切ることのできない素数として定義されていて,クンマーの定理によって正則素数であるすべてのnに対してフェルマー予想が成立すること,たとえば,100以下の非正則素数は37,59,67ですべてですから,この3つの数以外では100までのnに対してフェルマー予想が正しいことが証明されたことになります.
非正則素数は無限に多く存在し,691も非正則素数のひとつです.そして,クンマーの定理を精密化したもの(詳しく正確にいったもの)は岩澤理論と呼ばれています.
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[注]文献によってはB2kとしていることもあるので注意が必要です.たとえば,
「ベルヌーイ数とは,x/(exp(x)−1)
=1+B1/1!x+B2/2!x^2+B3/3!x^3+・・・
=ΣBn x^n/n!
によって定義される有理数で,x/(exp(x)−1)は数列{Bn}の指数型母関数になっています.」と書かれている場合は,奇数番目を飛ばさずに定義されているため,B1=−1/2で,
x/(exp(x)−1)−B1/1!x=x/2・(exp(x)+1)/(exp(x)−1)
は偶関数ですから,奇数項は第一項以外は0で,偶数項はB2=1/6,B4=−1/30,B6=1/42,B8=−1/30,B10=5/66,B12=−691/2730,B14=7/6,B16=−3617/510,B18=43867/798,・・・
あとは分子が急速に大きくなり,たとえば,B32=−7709321041217/510,B34=2577687858367/6です.分母は必ず6で割り切れます.数論の本では,ベルヌーイ数の定義としてこれを採用しているものが多いのですが,この場合,よく知られた公式は,
B2k=(-1)^(k-1)・2(2k)!/(2π)^2k・ζ(2k)
と表されます.
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