■18世紀における微積分(その91)
アステロイドを拡張する方向としては,ひとつには次元を増すこと,もうひとつは尖点数を変えることが考えられます.アステロイドの次元を増すと,3次元アステロイド
x^2/3+y^2/3+z^2/3=a^2/3
となりますが,この図形は6つの尖点を持っています.
ところで,アステロイドの表面積はなかなか解けない問題として,悪名高いものです.ベータ関数を除いてはせいぜい初等関数がでてくるだけなのに,置換積分を何度も行っているうちに,そのつど係数が長くなってしまい,前途多難.−−−計算の原理は難しくはなく,私も解決に至るシナリオ,ストーリーはわかっているのですが,いくら手計算しても答えが合いません.
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【1】3次元アステロイドの表面積
具体的な計算の方法までわかっているのに,答えが合わない.計算というのは不可解なものです.そこで,話を2次元アステロイド
x^2/3+y^2/3=a^2/3
に戻して,その周長L・面積A・回転体の表面積S・回転体の体積Vを計算してみましょう
L=∫{1+(y’)^2}^1/2dx
A=∫ydx
S=2π∫y{1+(y’)^2}^1/2dx
V=π∫y^2dx
これらの積分は,
x=acos^3θ
y=asin^3θ
とパラメトライズすることによって,いずれも
∫sin^mθcos^nθdθ
に帰着します.この積分は,一般には,ベータ関数
B(x,y)=2∫(0-π/2)sin^(2x-1)θcos^(2y-1)θdθ
=∫(0-1)t^x(1−t)^ydt
ですが,例えば
∫sin^4θcosθdθ=sin^5θ/5+C
のように高校レベルで解けるものもあります.
計算の結果,
L=6a
A=3/8πa^2
S=12/5πa^2
V=32/105πa^3
が得られました.ただし,この数値は筆者が数式処理ソフトを用いずに,手計算で求めた値ですから,信頼率はかなり低いと思われます.読者諸賢の検算をお願いいたします.
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さて,一般に,多次元ユークリッド空間の点(x1,x2,x3,・・・,xn)は,r>0,0≦θ1,θ2,・・・,θn-2≦π,0≦θn-1≦2πを満たすr,θ1,θ2,・・・,θn-1によって,
x1=rcosθ1
x2=rsinθ1cosθ2
x3=rsinθ1sinθ2cosθ3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
xn-1=rsinθ1sinθ2・・・sinθn-2cosθn-1
xn =rsinθ1sinθ2・・・sinθn-2sinθn-1
と表すことができます.ただし,n=2のときは,周知のとおり,
x1=rcosθ1
x2=rsinθ1
とします.(r,θ1,θ2,・・・,θn-1)がn次元極座標です.また,そのときヤコビアンD(x1,・・・,xn)/D(r,θ1,・・・,θn-1)は
r^(n-1)sin^(n-2)θ1・・・sin^2θn-3sinθn-2
となります.
円周上の座標は,
x=rcosθ
y=rsinθ
と表され,2次元アステロイドでは,
x=rcos^3θ
y=rsin^3θ
とパラメトライズしました.
同様に,球面上の座標は
x=rsinθcosφ
y=rsinθsinφ
z=rcosθ
で定まります.したがって,3次元アステロイドでは
x=rsin^3θcos^3φ
y=rsin^3θsin^3φ
z=rcos^3θ
と変数変換して,これをもとにヤコビアンを求め,
S=∫∫{1+(∂z/∂x)^2+(∂z/∂y)^2}^1/2dxdy
の置換積分を繰り返すことになります.
J1=D(x,y)/D(θ,φ)
J2=D(y,z)/D(θ,φ)
J3=D(z,x)/D(θ,φ)
とおくと
∂z/∂x=−J2/J1
∂z/∂y=−J3/J1
より,
S=∫∫{J1^2+J2^2+J3^2}^1/2dθdφ
その際,
a)φに関する積分をcos^2φ=uと置換して先に計算する.
b)その結果生ずるθの積分のうち,逆三角関数を含む項ではsin^2θ=vと置換してから部分積分し,あらゆる無理関数を有理関数化する.
答は
S=17/12πa^2
私は大量の計算用紙を浪費したあげく,この答えを出すことを断念しました.すなわち,この問題はマイ未解決問題のひとつなので,手計算で答えを出した読者諸賢に対しては敬意を表したいと思います.一方,次の問題は簡単に解けました.
【問】3次元アステロイドの体積
V=∫∫zdxdy
を求めよ. (答)4/35πr^3
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