■平方和問題(その12)
(その11)では非可換な四元数と非可換・非結合的な八元数の数体系が存在することを述べた.
ハミルトンは非可換な四元数を発見したが,これは数の可換性を否定したことから,平行線の公理を否定したロバチェフスキーの非ユークリッド幾何学の発見と並び称される.
その後,グレーブスやケイリーによって八元数も見出されたが,
(a1^2+a2^2+・・・+an^2)(b1^2+b2^2+・・・+bn^2)=(c1^2+c2^2+・・・+cn^2)
の恒等式はn=1,2,4,8に対してだけ満たされるという驚くべき結果が19世紀末,フルヴィッツにより証明されている(1898年).
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【3】十六元数は存在しないことの証明(フルヴィッツの定理)
もちろん,三元数は存在しないので,六元数も存在しないが,ケイリー・ディクソンの2重化法
C=R+iR
H=C+e2C (複素数の複素化)
を適用して構成される超複素数体系が,八元数
O=H+e7H (四元数の複素化)
である.
しかし,このように倍増を重ねて新しい数体系ができるのは,八元数でストップするというのがフルヴィッツの定理である.この証明では単位元をもつ数体系を仮定するとR,C,H,Oに限るということを主張する.
これはまた,平方和問題
(a1^2+a2^2+・・・+an^2)(b1^2+b2^2+・・・+bn^2)=(c1^2+c2^2+・・・+cn^2)
はn=1,2,4,8の場合のみ解をもつことを意味している.
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