■直観幾何学研究会2024(その50)
【補】判別式
n次方程式:
f(x)=a0x^n+a1x^(n-1)+・・・+an=a0Π(x−αi)=0
が重根をもつためには,判別式:
D(f)=a0^(2n-2)Δ^2=0
が必要十分条件である.ここで,
Δ=Π(αi−αj) (1<=iはα1,・・・,αnの差積を表す.
差積Δは対称式ではないが,Δ^2は対称式であるから,基本対称式
σ1=α1+・・・+αn
σ2=α1α2+・・・+αn-1αn
σ3=α1α2α3+・・・+αn-2αn-1αn
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
σn=α1α2α3・・・αn (σkはnCk個の項をもつ)
の多項式として表されることが証明されている(対称式の基本定理:ウェアリング:1762年).すなわち,
f(α1,・・・,αn)=g(σ1,・・・,σn)
2次方程式f(x)=ax^2+bx+c=0の判別式は,
D=a^2(α1−α2)^2=a^2{(α1+α2)^2−4α1α2}
この場合の根と係数の関係は
α1+α2=−b/a,α1α2=c/a
が成り立つから,
D=b^2−4ac
はf(x)=ax^2+bx+cの判別式であることはよく知られている.
3次方程式の判別式は,ax^3+bx^2+cx+d=0の係数を代入して整理すると,
D=−4ac^3−27a^2d^2+18abcd+b^2c^2−4b^3d
が得られるが,とても憶える気にならないし,また,憶えられる代物でもないであろう.fの次数が高い場合,その判別式を計算するのは容易ではない.ちなみに,5次方程式の判別式の項数は59にもなるという.
一方,ジラールの標準形であれば,判別式は簡単な形で表される.
f(x)=x^3+px+qの判別式は
D=−(4p^3+27q^2)
f(x)=x^n+px+qの判別式は
D=(-1)^(n(n-1)/2){(-n+1)^(n-1)p^n+n^nq^(n-1)}
また,fの次数が高い場合の判別式は,重根をもつことは判定できても,実係数2次方程式のように実根,虚根,重根の判別ができるわけではない.たとえば,実係数3次方程式では,
(H1)異なる3つの実数解をもつ
(H2)3つの実数解をもつが重根が入っている
(H3)1つの実数解と1組の共約な虚数解をもつ
のいずれかであるが,D>0ならばH1,D=0ならばH2,D<0ならばH3である.また,3重解をもつための必要十分条件はD=0,b^2−3ac=0である.
4次以上の実係数方程式の場合は
D=0:重根をもつ
D>0:偶数組の共約な虚数解をもつ(重根はない)
D<0:奇数組の共約な虚数解をもつ(重根はない)
であり,D=0は重根をもつための必要十分条件であっても,実根,虚根の判別ができるわけではないのである.
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