■直観幾何学研究会2024(その16)

【懸垂線】

 伸び縮みしないひもの両端を固定しぶら下げてできる曲線を懸垂線(カテナリー)といいます.ひもの両端をもちあげたときに,そのひもがどのような形状をとるかは,古くからある変分問題のひとつで,長さと端点が固定されている曲線:y=f(x)の位置エネルギーを最小とする関数形を求めよということになります.

 微小部分における曲線の長さは∫{(dx)^2+(dy)^2}=∫{1+(y')^2}dx

また,そこでの位置エネルギーは高さyに比例しますから,位置エネルギーは,

  U[y]=∫y(1+(y')^2)^1/2dx

で定義されます.

 また,ひもの長さは

  L[y]=∫(1+(y')^2)^1/2dx

であり,この問題は条件付き極値問題ですから,ラグランジュの未定乗数法を用いて解くことができます.

 ここでは問題を定式化するだけで,実際の計算は略しますが,その解は端点の位置に関わらず,双曲余弦関数

  y=a/2{exp(x/a)+exp(-x/a)}

になります.懸垂線はちょっとみると放物線ではないかと思われがちですが,放物線よりもずっときつく上昇する曲線です.

 一方,ゴムひものように伸び縮みする素材で作られたひもの両端をもってぶら下げたときに,ひもがとる形状はカテナリー(懸垂線)とはなりません.この場合,ひもの長さは固定されておらず,位置エネルギーだけでなく,張力エネルギーとの和を最小とするような形状をとるからです.

 張力エネルギーは微小部分のひもの伸びの2乗になりますから,

  T[y]=∫{(1+(y')^2)^1/2-a}^2dx

ここで,(1+(y')^2)^1/2がaに比べてきわめて大きい状態に理想化すると,

  T[y]=∫(1+(y')^2)dx

 そして,c1*U[y]+c2*T[y]の変分問題を考えると,その解は放物線となります.カテナリーは代数曲線ではありませんでしたが,ここでまた代数曲線が登場しました.

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